患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

五十肩 – 五十肩の拘縮が5回で改善に向かいました

患者様
女性 Nさん 54才 保育士

主訴

五十肩

院長の病態分析

katakori当院に訪れたのが、ちょうど4ヶ月と15日目でした。自動(自分であげること)ではもちろん、他動(他人に手伝ってもらうこと)でも、上腕がかたまって90度以上挙上することが出来ませんでした。さらに激烈な痛みを伴い、挙上後はうずくような痛みがしばらく残存する状態でした。

これまでの経過は、少しの痛みが2ヶ月、だんだん悪化が2ヶ月、そこから半月。4ヶ月と15日で、上腕が90度以上上がらない状態となりました。

ふつう、90度より少しでも挙上出来る状態(他人に手伝ってもらってもよいのですが)で当院を来院して頂ければ、治療を開始すれば、1回1回、治療を重ねる毎に改善がみられます。治るのも10回とか15回とか期間もこれぐらいと言ってあげられるのですが、残念ながら今回の場合、90度でかたまって、押しても引いてもにっちもさっちもいかない状態でした。

このような状態を完全拘縮と言います。一旦拘縮すると、貝が蓋を閉じてしまってなかなか手で開けられないように、そう簡単には改善できないのです。

いつ拘縮が改善するかという予測も難しいのです。個人差があり、半年くらいで回復する人もいれば、私の経験では拘縮が1年続くことは普通によく見られ、最長2年以上拘縮が続いて当院を訪れた症例も何十回も経験しております。

ですから、拘縮を除くこと(90度以上挙上できるようにすること)に目標を設定しました。拘縮さえ取り除けば、月日を重ねる毎に、日々改善されていくものです。

bensyou通常の怪我なら月日の経過と共に段々と改善していくのですが、五十肩は逆に、月日の経過と共に悪化する場合が多いのです。五十肩自体、台風の目のようにエネルギーを持っており、その強さや大きさは一人一人異なり、経過を正確に予測するのが難しいのです。それは、本人の体質が大きく影響するからです。新陳代謝の良い人は痛みがひどく、症状が重く見えても改善が早いのですが、新陳代謝の悪い人は、決まって改善が遅いと言えます。

さらに、筋肉の状態や身体の歪み、五臓六腑すなわち内臓の働きや免疫力が影響します。

近年は、1年近くなるのに求心性萎縮(体の中心に向かって筋肉が縮こまる)を伴う患者様が来院されることが多くなりました。すなわち1年も経つのに、まだ悪化しようとしているのです。

しかし当ケースにおいて、拘縮を改善させることに15回の目標を設定しました。ご本人の「絶対治します」、「最後まで頑張ります」、「よくなるまで通います」、という強い言葉に心が動かされたからです。互いに全力で取りくみましょう、ということで治療をスタートしました。

原因は、仕事や家事、及び介護、そして幼いころから取りくんできたバレエを一生懸命行ったため、身体の疲労は限界を超えていました。肩甲骨の下端の両側の筋肉の痛みから始まり、肩甲間部(肩引き)すなわち菱形筋の萎縮、および上肢帯筋の萎縮を引き起こしました。

illust4238さらに、首から肩甲間部にかけての筋肉(肩甲挙筋)が萎縮してガチガチにかたまり、僧帽筋がその上から張り付いて、身動きがとれない状態になっていました。

そして、身体の全面の大胸筋、小胸筋、鎖骨下筋が萎縮してかたまった状態でした。三角筋および三角筋の前側繊維がそれに巻き込まれて萎縮してかたまっていました。

また、肩甲骨の裏側の筋肉が萎縮し、肩甲骨が貝の殻のように固く締まってかたまった状態でした。

また、求心性萎縮(台風がだんだん勢いを増すような)のエネルギーを持っている状態でした。さらに悪化する可能性がありました。

導通鍼(針麻酔)を行いながら、1回1回90分以上かけて行いました。5回で拘縮が取り除けたのは、私と一緒に一生懸命練習に取りくんでくれたからです。治療後も当院で30分くらい練習を行い、家でも練習を行ってくれました。

現在、立位で上腕135度挙上、横に寝て上腕が180度挙上(どうにか耳に付く)できる状態です。これからの目標は、バレエができる状態までできるだけ早く改善させることです。これからも予想以上に早く改善してくれそうです。もう少し一緒に頑張りましょう。