患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

逆流性食道炎 – 女性N.S.さん 年齢80歳 (大阪府箕面市在住)

患者様
大阪府箕面市在住 女性N.S.さん 年齢80歳

主訴

〇逆流性食道炎

随伴症状

〇食欲不振
〇大腸憩室
〇腰の痛み~下肢への神経痛
〇首、肩の凝り
〇不眠

現病歴

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6ヶ月前より時々胸焼けが起こり、酷くなると胸が焼けつく感じがします。病院では逆流性食道炎と診断されました。病院でもらった薬を飲むと楽になり、焼けつく感じもなくなっていました。しかし、4,5日前から薬を飲んでも胃の入り口がすっきりせず、次の薬を飲むまでに胸の辺りに違和感が出てきて、薬の効果も持続しなくなりました。だんだん食欲が湧かなくなりました。

10年前、結腸が炎症を起こし、細くなって、細い便しか出ません。外科胃腸科で大腸憩室と診断され、何年か後に腸捻転を起こし、手術をしました。その後食が細くなり、体重が10㎏減って現在42㎏です。病気が再発しないように便秘にはとても気をつかっています。良いという食事療法を色々試し、朝昼晩の食事には気を付けて、食物繊維を取り入れ、便が硬くならないように細心の注意を払っています。自分に合った食養上を見つけたので順調にいっていました。

折角順調にいっていたのに、食べることができないと便秘になり、再発が心配です。持病(大腸憩室)を持っているので食べることができないことが最大の悩みです。

また、病院で骨粗鬆症と診断されて、骨密度は平均年齢の70%くらいしかありません。そのためか5,6年前から腰が前屈みになっています。腰が常に痛く、臀部から下肢にかけて時々神経痛が起こります。友人と3年前まで歩いていましたが歩けなくなりました。

去年の秋、娘の足の病気のことが心配でとてもストレスになりました。どこの病院にいっても治らなかったので、治るのかどうかとても心配していました。娘さんの紹介で、本日娘さんとともに来院しました。現在娘さんの疾病は私がみさせて頂いており、回復しつつあります。

現象

舌脈診

舌診

舌診 紅絳舌やや紫暗 薄白苔やや黄、乾燥

脈診

脈 72毎分

気血津液弁証

気滞 血瘀 湿熱

中医学弁証

肝気犯胃
肝欝気滞

原因の分析

早寝早起き、規則正しい生活と食事療法により、大腸憩室は順調にいっていました。逆流性食道炎を引き起こしたのは、娘さんの足の病気が起こった去年の秋頃からです。どこの病院に行っても治らない娘さんへの心配が引き金となったものです。

その後も快復が芳しくない娘さんの心配が続きました。ストレスが胃や腸などの消化器官に影響し、逆流性食道炎を悪化させました。

食欲が無くなったのは、不安や心配により胃や腸の働きが低下したためです。

治療方針

mi6iRストレスにより失調した胃や腸などの消化器官の新陳代謝を改善させることが第一です。心身にリラクゼーションをもたらせる鍼灸治療を施し、不安や心配を和らげます。精神的な緊張、不安が胃や腸などの消化器官に一番影響しているからです。まず精神的な影響を断ち切る治療を施し、併行して胃や腸に対して正常な生理機能をもたらすよう働きかける鍼灸治療を施します。

東洋医学ではストレスが身体にどのように影響するか4000年の歴史をかけて研究し続けてきました。その結果、ストレスが胃や腸などの内臓諸器官にどのように影響し、生理機能が失調するか、そのメカニズムを解明しました。そして現在でも通用するとても効果的な治療方法を確立しているのです。健胃といって、胃を強くしたり腸の働きを高め、便秘を根本的に改善出来るのもそのためです。よく噛んでゆっくり食べること、娘さんの疾病が改善することを説明しました。胃や腸の負担を軽減し、不安を解消させることが大切です。

経過

第1回目

肩の凝りと違和感がやや残る。最初より大分すっきりしました

第2回目

劇的に良くなったので胸焼けの薬をやめました。

第3回目

10年ぶりに見るぐらい太い便が出た。いつもの3倍はあった。こんな便の出方をしたのは初めてで、いつも残便感がありました。硬くなったのではなくこんなにスッキリしたのは初めてです。しばらく見とれました。

第4回目

いつもコルセットをするのを忘れています。首の鍼が気持ちが良く、頭痛がしなくなりました。

私の考え方

s-20110307112837139279ストレスが関与して引き起こされた症状です。ストレスが逆流性食道炎を引き起こし、ストレスが長引いたことにより、逆流性食道炎は悪化しました。さらに、食欲不振となりました。ストレスが関与して引き起こされる胃腸や内臓諸器官の失調に対しては鍼灸治療がとても有効です。

何年も続く便秘が数回の鍼で根本的に改善されるのも稀ではありません。慢性的な胃腸障害や便秘も時間をかけてじっくりと治療すれば、ほとんどのケースで根本改善がはかれています。病院に行っても検査では異常がないが、慢性的な疲労倦怠感や不眠、肩こり、胃腸障害、さらにいつも体調不良で悩んでいる方がとても多いのです。鍼灸治療によって免疫力を引き出し、最大限に高めて行けば、どんな疾患でも根本的な改善が期待できます。

今回は鍼治療で良いホルモンを促し、不安・あせり・イライラ・葛藤などのスレスの原因を改善していきました。
また胃については、直接効果のある鍼治療を行い、身体全体を正しい状態へと導いていきました。
自覚症状として、改善がみられましたのでよかったと思います。