患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

腰が慢性的に痛く、前傾姿勢がとれない、反れない 55歳 女性 I.Eさん

症例

腰が慢性的に痛く、前傾姿勢がとれない、反れない
帰宅後は台所で座り込むぐらい倦怠感が強く、朝の寝起きも同じでまったく疲れがとれない状態が続いている

主訴

  • 腰の疼痛。
  • 倦怠。倦怠感。

随伴症状

  • 首・肩の凝り

現病歴

572385ケアマネと介護の仕事をしています。
春過ぎより、腰があまりにも痛くなってきました。
これ以上強くなると仕事もできなくなると思い、整形にも整体にも行きました。

整形外科の診断と治療

整形ではレントゲンを撮り、第5腰痛の横突起が仙骨を触っている、仙腸関節が摩耗し痛んでいるため痛みがでているのではないか、と言われました。骨は年相応だと言われました。
ブロック注射を受けましたが、変化はありませんでした。

整体・鍼・マッサージにも通いました

整体にも鍼・マッサージにも週1回、2、3ヶ月通いましたが、痛みはどんどん進行しています

現在の症状

107310現在、腰が反れない、捻れない状態で、右の股関節を外に開くと鼠径部に神経痛様の強い痛みが走ります。
仕事中に腰がてんぱってきて、帰りには自転車をこげない状態です。右腰を中心に骨盤の右側が痛く、右臀部が常に突っ張っています。右下肢への神経痛が続いています。
身体が疲れやすく、帰宅後はグッタリして横になっています。
倦怠感が強く、朝起きて快調な日は一日もなく、疲れが溜まって行く一方です。
腰痛や鼠径部の痛み、下肢への神経痛がだんだん酷くなり、疲労困憊した状態が続いています。

私の願い

腰の痛みを何としても改善すること、体質を根本的に良くして仕事が続けられるようになりたいと思い、あちこち探して疾病の根本改善を行なっている当院のホームページにたどり着きました

現象

腰について

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〇後屈にて疼痛、左右回旋にて疼痛
〇右股関節を外旋すると鼠径部に神経痛様の疼痛が走る。
〇右骨盤および右臀部に突っ張りがあり、右下肢への神経痛が起こる。
〇首・肩の筋緊張、著明

舌診:淡紅舌、白膩苔  舌下静脈怒張、歯痕あり
脈診:細濡脈、毎分60

舌脈診より以下のようなことが判断できる

tongue out
苔が白膩苔であり、体内に水分が停滞して代謝が悪い。
舌下静脈が怒張し、全身の血流が悪い

腰の筋肉の触診・舌脈診から以下のことが分かる

筋肉の弾力が乏しく、硬い(筋肉の浅層部は硬くなり、中層部から深層部にかけて沼のようになり伸縮が悪くなっている)

病態分析と治療方針

身体の分析

全身の血流や水分代謝が悪く、疲労がとれず、倦怠感や慢性疲労に繋がっている
また血流の悪さや水分代謝の悪化が全身の筋肉の質を低下させている
硬くて弾力性のない筋肉であり、かつ筋肉が沼のように粘って伸縮力のない筋肉になっている。

腰の筋肉の分析

腰の筋肉が硬く粘土状になり、神経圧迫を引き起こし、臀部の引きつりや鼠径部、下肢への神経痛を引き起こしている
全身の血流と水分代謝を良くし、疲労の回復を促す。腰部と骨盤臀部の筋群を浅層から深層までほぐし、神経圧迫を取りのぞく。
そうすれば、腰のつっぱりも取れ、鼠径部の神経痛も下肢への神経痛も改善する。

治療方針

全身疲労の改善と腰の痛みや神経痛の改善の同時進行をはかる
ものすごく重症で治りにくそうな身体に見えるが、病態は機能的なもので、気質的なものではなく、そう重くはない。しかし慢性疾患である。

慢性疾患は2,3年放置した荒れた畑を
元の良い畑に戻すようなもの

a0259fa42fc798e1d039724c42ca3c4a_m自然界の畑で例えて言うとどんなに良い畑も手入れをせずに2,3年放置しておくと、表層の土は痩せ硬くなり、中層は粘土が増し、底はとても硬い粘土上になる。これを元の畑に直すには、表層から耕して肥料をやり、水をやり、中層・深層までほぐさないと良い畑にはならない。人参や大根などの土深く入るものは育たない。私たちの身体も同じである。

治療目標

illust4238硬い筋肉をほぐし柔らかくし粘土状の筋肉を弾力のある線維によみがえらせる。

最初の10回を目標に、腰の筋肉を表層から深層までほぐす。
硬い筋肉をほぐし柔らかくし粘土状の筋肉を弾力のある線維によみがえらせる。鍼をすると、鍼を置いた下の筋肉は必ず緩む。だから、できるだけたくさんの鍼を筋肉の硬さや軟らかさ、粘土に合わせて1本1本、鍼の長さや太さ、弾力や軟らかさを変えて合わせながら丁寧に治療を施してゆく。鍼を抜いた後はリンパ球が集まってきて、筋肉や周囲の神経を修復させる。生まれつき人間なら誰しも持っている自然回復能力を利用して大いに鼓舞して自然修復をはかる。浅層から中層・深層まで丁寧にほぐす。

これらは手作業でなければ成し遂げられない職人芸である

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手作業でなければ成し遂げられない職人芸である。
一人一時間はかかる。一日、何人にもできる作業ではない。
でも私はこの仕事を選んだ。私しかできない仕事として誠意をこめて取りくむ。

介護の厳しい仕事にも耐えうる骨格矯正を行う

illust423610回から20回は、筋力強化をはかり、介護の厳しい仕事にも耐えうる骨格矯正を行う。疲労倦怠感や慢性疲労については難しいように思うが、治療を進めればすぐから改善を実感して頂けると思う。すべての症状の改善後は、以後、定期的にメンテナンスを行い、自然回復能力を高め、数十年来の持病の根本改善をはかる
良いコンデションで仕事が続けられるようにする。

病態の改善の困難な疾患について早期に改善できるのは東洋医学の醍醐味

bensyou器質的な疾患ではなく、機能的な疾患で病態の改善の困難な疾患について早期に改善できるのは東洋医学の醍醐味である。私がやっている中医学弁証論治による治療は世界が認めた東洋医学である。
韓国ドラマなどでも、鍼や漢方薬などが王様や王室の治療に使われている光景がよく見られ、少し身近に感じる方もいるかも知れない。
しかし、鍼灸の発祥地、中国では4000年の歴史のなかで治療体系が確立されており、日本よりも遙かに高度に進んだ医学であり、もっと東洋医学を世に出さないともったいない。アメリカ合衆国では、中国に次いで鍼灸・漢方治療が進んでいることもほとんど知られていない。1970年、ニクソン大統領が中国を訪問したとき、針麻酔による脳切開手術をみて感動し。その後、アメリカ合衆国で鍼灸大学を作り鍼灸医師を作り、50年、ものすごい進歩である。

治療経過

3回目の治療後の身体の状態をお伺いしました。

体調の変化はありますか?
「全身が軽くなりました。以前は帰宅後に台所で倒れ込むほど倦怠感が強く(朝の寝起きも同じ)、まったく疲れがとれない状態でありました。
今回で3回目ですが、身体を動かそうと言う気持ちになります。」
痛みの強さに変化はありますか?
「治療前の痛みに比べて10から7位になったと感じます。腰(特に右)から下半身はまだ痛みが奥の方から響いてきます。」
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
「まず溜まった疲労物質を少しずつ取り除き、体質改善をしたいです。その中で腰痛が治っていけば幸いです。できれば数十年来の下半身を中心にした身体のバランスを治したい。」
その他ご希望があれば、自由にお書き下さい。
「昨晩の呼吸法に伴うヨガの動きのご指導有り難うございました。
今後も少しずつ取り込んでいきたいと想いますので、機会があれば宜しくお願い致します。」

第9回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
腰から足にかけての痛みが半分以下になり、とっても楽です。普通に仕事ができるようになりました。
身体のしんどさも軽くなりました。
体調の変化はありますか?
良好です。とても元気になりました。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
痛みの軽減、胃腸を含む体質改善