患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

腰痛・椎間板ヘルニア – 大阪府豊中市在住 男性 W.S.さん 年齢36歳

患者様
大阪府豊中市在住 男性 W.S.さん 年齢36歳

主訴

〇腰痛
〇椎間板ヘルニアによる下肢の痺れ

随伴症状

〇頭痛
〇首肩が凝る

現病歴

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7,8年前から痛くなったり治ったりが続いています。整形外科で椎間板ヘルニア(軽度)と診断されています。歩いて足を前に出すと右腰仙骨が痛みます。ゴルフや長距離運動でも痛みます。治ったと思ったらまた痛くなります。右か左が痛くなり、痛くなっている側の太ももの後ろが痺れます。今回3週間経ってもなかなか回復せず、このままでヘルニアが悪化してはいけないと思い、来院しました。

子どもの時からですが、朝起きたら時々頭痛が起こります。側頭部がズキズキと痛み、薬を飲んだら治ります。仕事は半分デスクワークで半分は外交です。仕事が忙しいときはイライラしたり、焦ったりします。

現象

〇骨盤
左の骨盤が前上方に傾いています。(左ASカテゴリー1)

〇体が硬く、前屈があまりできない

舌脈診

舌診

脈診

気血津液弁証

中医学弁証

原因の分析

腰部・仙骨間の深層の筋群の緊張が見られる。そのための神経が圧迫され、痛みと痺れが現れている。

腰の痛い側の足が痺れるのは、その側の神経圧迫によるもので、左右両方に同一の筋緊張があると思科する。疲労や過労が重なったための筋緊張による神経圧迫である。

治療方針

_MG_1102椎間板ヘルニアがあるので、腰部・仙骨間の深層の筋群の緊張を完全に取りのぞく事を目標とする。
一度完全に緊張を取り除くと、腰痛は起こりにくい。正常な期間が長く維持できる。
神経治療と骨盤矯正を併用し、改善期間の短縮を図る。

改善後は、定期的なメンテナンスを行い、痛みや痺れが長引かないようにする。
さらに、メンテナンスを続けることで、ヘルニアが自然吸収されることを目標とする。

経過

第1回目

痺れを取るために、腰部仙骨の関節の深層の筋群まで緩めていく必要がある。そのため、上層部の筋層から丁寧に緩めてだんだん中心層の筋群に迫っていき、神経圧迫を改善し、痺れを取りのぞく。
姿勢の歪みによる神経圧迫や血流障害を改善するために、骨盤の歪みを矯正する。骨盤の歪みを矯正する。鍼灸治療と矯正を並行することで、改善を早めることができる。

第2回目

1回目と同様の処置
経過は良好である。

第3回目

同様の処置で経過は良好。

第4回目

同様の処置で経過は良好。
ほぼ深層部の筋群の緊張が改善され、痛みも痺れもなくなった。

第5回目

痛み、痺れなど全ての症状が消失したので治療を終了する。一ヶ月後の再受診とする

私の考え方

achilles_woman椎間板ヘルニアを持っているケースの場合、痛みや痺れを悪化させないことがポイントである。
悪化させてしまうと、治療が長引く。
逆に、定期的なメンテナンスを行っていると、1,2回の治療で改善する。腰が重くなったり、痛くなったら早めにメンテナンスを行うことが大切である。
調子の良いときは、腹筋の強化、ストレッチや軽度の運動、歩行などにより筋力が弱らないようにすることも大切なポイントである。

小さなヘルニアの場合、1~3年ほどでヘルニアが自然吸収されるケースも見られる。
以後全く痺れが消失した例も少なくない。完全治癒を目指すか悪化させないことが大切である。