患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

足の甲の痛み – T.Uさん 34才 男性 会社員

足の甲の痛み – T.Uさん 34才 男性 会社員

主訴

 
右足の足首をあげると、足の甲が痛むのが2ヶ月半続いて治らない

現病歴

 
kansetsutsuu_ashikubi本年4月の中旬に、ゴルフのラウンド後、足背が痛くなりました。足首を上に曲げると、足背に鋭い痛みが走ります。痛みがきつかったので、整形外科を受診しました。レントゲン上では異常なしで、足背部には、神経が固まっているので、痛みを起こしたのだろうということで、足を良く伸ばしておくように言われました。

2ヶ月以上経ちますが、一向に痛みが治まらず、当院に来院いたしました。当初は外顆の下方が、少し腫れていたということでした。

現象

 
足関節及び足背部の靭帯、押圧、牽引 いずれも異常なし。
リスフラン、ショパール関節 いずれも異常なし。
第一拇指側の距骨と舟状骨の間、伸筋支帯の上から押圧すると、局所に圧痛。痛みが少し外側にも放散する。
足首を背屈すると、同様の痛みが起こる。

病態分析

 
足関節を背屈すると、痛みが起こる。痛みが起こる部分は、第一拇指側の距骨と舟状骨の間。伸筋支帯の部分である。
前脛骨筋の腱が通っている部位上である。
伸筋支帯と前脛骨筋の摩擦による痛みである。
前脛骨筋が短縮し、伸筋支帯との間に炎症を起こしたものである。
当初外顆前方外側にも腫脹があったということで、長腓骨筋、長指伸筋の短縮も関与している
ゴルフのラウンドは月1回ということなので、筋肉に無理な負担がかかった可能性がある。月1回というのは、逆に毎日のように練習している人に比べ、筋肉の数倍の負担がかかる。使っていない筋肉を使うからである。
2ヶ月半という、少し長期化しても治らないのは、筋肉の強い短縮による強い神経圧迫が考えられる。足関節の靭帯には異常がみられなかったからだ。
又、トーマスモートン症候群や第1・第2ケーラー病も頭に浮かんだが、すべて否定できた。
骨の異常や大きな病気の存在はなく、単に筋萎縮による神経圧迫と思われる。

治療方針

 
216033前脛骨筋及び長腓骨筋及び長指伸筋の短縮を、鍼の施術で丁寧にほぐしていき、短縮を取り除き、神経圧迫を解除する。
長腓骨筋及び長指伸筋、前脛骨筋をしっかりとゆるめていく。
それが最も大切な根本治療である。

補足的な治療として伸筋支帯の上からレーザーを照射する。同じくマイクロ波を照射する。

私見

 
足関節の痛みということで来院された。当初は捻挫であり、鍼の出番はないかと思ったが、足関節の靭帯に異常はなく、捻挫ではなかった。こうなると、いよいよ鍼の出番となる。こういう筋肉の短縮が絡んだ神経痛様の痛みには、何より鍼が効果がある。当院では足の痺れや神経痛、手の痺れや神経痛の患者様が多く来院する。重症の患者様にも慣れたが、このような疾患に対しても鍼の著効があることを知っていただきたい。

これから運動を始められる方へ

bensyou最近は、テニスやバトミントンが人気なのか、テニス肘バトミントン肘の患者様が急速に増えている。オリンピック効果なのか、卓球の選手が来るかも知れない。いずれにしても、スポーツを通して健全な肉体と精神を養う人が増えることは喜ばしいことである。運動する前のアップと、運動後のクールダウンを忘れないように十分にしてほしい。

週に1・2回だけ運動を行う人の為に

さらに、毎日ではなく、週一回とか2回とかだけ練習する人においては、とくに毎日15分でも良いから、サーキット的な運動神経や筋力の総合力を高める運動を行なってほしい。そうすれば、ケガが防げるだけでなく、ベストコンディションで練習に臨めます。うまくなるためには、良いコンディションで自分に合った合理的な練習方法をコーチに相談したり自分でも考えて、短い時間でも良いから、毎日、続けることです。