患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

野球により肩と手首を痛めた

初診

初診  2018年 6月8日
18歳 男性 

主訴

野球により肩と手首を痛めた

診断名

  • 野球肩
  • 野球肘(前腕筋群の著明な筋緊張による手関節の背屈痛)

随伴症状

  • 首及び肩背筋群、腰の筋群の緊張

現病歴

野球肩.jpg

野球の練習でボールを投げると、腕がちぎれそうになるぐらい痛く、しばらくうずくまる。バットをうつ時、手を背屈すると、手関節に激しい痛みが引き起こる。

日常生活では、手をあげたら痛く、後ろに手を回せない。手関節は歯磨きでも痛む。

我慢して投げていたが、投げた後に激しい痛みが持続し、これを続けると、日常生活も出来なくなるのではと思い来院しました。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
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以下の筋肉に強烈な筋緊張をみとめる。

  • 手関節についての疼痛についての筋群
  • 腕橈骨筋、総指伸筋、小指伸筋、尺側手根伸筋、長掌筋、橈側手根屈筋、円回内筋
    前腕筋群の内側、外側の料金群を傷めている。そのために、手関節疼痛が起こっている。内側、外側を傷めているので、両方の改善が必要である。

  • 肩関節の疼痛について
  • 外側上腕筋間中隔に強い筋緊張を認め、屈筋群と伸筋群の溝がふさがっている。
    上肢帯筋(棘上筋、棘下筋、三角筋)の筋緊張著明。
    肩甲挙筋、中斜角筋、菱形筋、僧帽筋の筋緊張著明。
    腱板を中心とする求心性の強い筋緊張を認める。

中医学による病態の把握
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    ~舌診~

  • 舌体 老舌
  • 舌色、紅舌
  • 舌苔、薄白膩苔
  • 舌下静脈の怒張、有り
  • tongue out

    ~脈診~

  • 毎分72 脈状滑脈
  • ~臓腑弁証~

  • 特になし
  • ~気血津液弁証~

  • 気滞証
  • 痰湿証
  • 瘀血証

方解

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picher野球の練習で、筋肉に疲労が徐々に積み重なっていった。上肢を体幹に固定する腱板筋群を中心に、三角筋及び菱形筋、肩甲挙筋など肩を動かす筋群に緊張が高まっていった。特に、外側上腕筋間中隔の溝が筋肉の緊張で埋まってしまい、屈筋群(腕を曲げる)と伸筋群(腕をのばす)の拮抗がうまくいかなくなった。そのことで、上腕に疲労が溜まっていってピークになった。
それを守るために三角筋をはじめとする上肢帯筋は、強力に求心性萎縮を引き起こした。投げた後、激しい痛みが持続し、腕がちぎれそうになるのはそのためである。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~

気・血・水の流れを改善

~局所的な視点から診た鍼灸治療~

現代医学的に病態把握で指摘した筋群を一つ一つ徹底的に緩めていく。特に、外側上腕筋間中隔の筋緊張を取り除き、屈筋群と心筋群の間に溝を作る。あとは、上肢帯筋をはじめとする筋群をゆるめていけば、痛みの改善を高く期待できる。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第7回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
普段の痛みが無くなった。
全力で投げると痛みが少し残る。

第8回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
投げても痛みがおこらなくなった。
全力で投げても痛みが起こらなくなった

私見

bensyou
5回ほどの治療で、痛みをほとんど感じることがなくなった。6―8回目の治療は、実際に投げてもらいながら、治療を続けた。それはどの程度の力でなげれるかを理解してもらう為である。
痛みが無くなった=全力で投げても良い、ということではないのである。
痛い期間が、長く続いているとその間に筋肉が落ちて、筋力が低下している。その分、痛みが無くなっても段階的に投げていく必要があるのである。最初は70%、それで痛みがなければ、80%で投げる。次は90%、100%で投げるまでに1-3ヶ月要するのである。今回は、概ね全力(90%)で投げても痛みが無くなったので、以上の事を告げて、治療を終了した。
もし痛みがあれば、出来るだけ早めに治療するのがどんなケースにおいても好ましい。それと、練習後の整理運動が何より大切である。当院では週一回、ヨガを根底に呼吸法を行いながら、短い時間で大きな効果が期待できる健康体操を行なっている。全身の体調の調整や、身体の歪みを直したり、筋力強化のリハビリを行なっている。それに参加する、高校生や大学生も増えてきた。それは今までには無いことで、私自身とても積極的に練習使用とする人が増えたことを喜んでいる。

公開日:2018年8月3日 更新日:2018年11月5日 ©