患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

[頸椎ヘルニア] 女性

主訴

頸椎ヘルニアから来る左肩甲骨、腕、肘の激しい痛み

現病歴

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左肩甲骨、腕、肘にかけて鋭い痛みが続いて、仕事に支障をきたすようになりました。
整形外科を受診し、MRIの結果、頸椎ヘルニアと診断されました。首の牽引をして、鎮痛剤を処方されましたが、数日たっても仕事に支障を来すほどの痛みが続いていました。

仕事が忙しく、ストレスが溜まって、腹立たしく思う日々でした。
疲労が取れず、痛みで身体が疲れて何もする気が起こらなくなり、好きな本も読まなくなりました。
早く寝て睡眠をとるようにしておりますが、毎日、疲れております。

病院では、このまま温存するより他はないと言われ、ネットで検索して、当院のホームページを見て、2017年10月5日に来院しました。

現象

~現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論に基づく中医学弁証による全身状態の把握~

  • 頸部より肩、肩甲患部の筋群の筋緊張
    (胸鎖乳突筋、斜角筋群、板状筋、後頭下筋、脊柱起立筋、前鋸筋、上肢帯筋)
  • 肘関節
    (長短橈側手根伸筋、小指総指伸筋、尺側手根伸筋)

  • (腰部筋群に著明な緊張を認める。とくに右の腰方形筋、脊髄起立筋)

    首の徒手検査

  • スパーリングテスト(陰性)→神経根症は認められない。
    ※これは、神経根症を判定するのに最も重要な検査法である。
  • ライトテスト(陽性)→胸郭出口症候群において陽性になることが多い。

首の側屈痛、後屈痛あり。
痛みや痺れ感の誘発・増悪が見られない。

脈診 : 渋脈(血液の流れの悪いことを示す)
舌診 : 淡紅舌やや紅、白膩苔(苔が多い、水分が停滞し、古い水が体内に長く留まっていることを表す)

方解

首・肩および肩甲患部、上肢帯筋に強力な筋緊張を引き起こしています。
腰の筋肉も緊張して疲労しております。

首の運動痛と運動障害はありますが、徒手検査において神経根症は認められませんでした。
したがって、首から上腕・肘にかけての神経痛様の鋭い痛みは胸郭出口症候群によるものと判断いたします。
首の筋肉が緊張しすぎたために、神経圧迫を引き起こし、腕や肘・肩甲骨に痛みを引き起こしたものと判断します。

仕事が忙しく、精神的にも疲労が溜まっています。
腹が立ったり、やる気が起こらなくなるのは、肝気が鬱滞しているためです。
肝気が鬱滞すると、イライラしたり、腹が立ちます。肝気の鬱滞が長引くと、全身の血流が悪くなります。
さらに、水分代謝が低下して、古い水が体内に停滞します。
身体の疲労が回復しにくくなり、精神が抑圧され気力もなくなります。

中医学弁証では、臓腑弁証は肝欝気滞です。
気血津液弁証は、気滞・血瘀・痰湿証です。

治療方針

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首・肩・肘・肩甲患部・腰の筋肉を鍼灸治療で緩めて、神経圧迫を改善させます。
さらに鍼治療で全身の血流と水分の停滞の改善を行います。
肝気を巡らせ、肝気の鬱滞を改善させることで、精神の抑圧を減少させます。

以上で全身の血流と水分代謝が促進されます。
全身の自然回復力を高めることで、局所の緊張を早く改善し神経圧迫を抑制します。

治療経過

第3回、4回目の治療

鍼施術で痛みが7割改善。

第9回目の治療

痛みが完全に消失する

第10回目の治療

自覚していなかった右腰深部の痛みや顎の筋肉の凝りが改善。
身体全体の調子がよくなる。

私見

痛みが早く治ったのは、MRIで頸椎症と診断されていましたが、徒手検査では、神経根症は認められませんでした。
したがって、頸椎症(※)はあっても、今回の症状は頸椎症からのものではなく、筋肉が凝り固まったことから神経圧迫を引き起こした(胸郭出口症候群)ものであったからです。
※…骨の変形や椎間板の繊維化により、椎間板が薄くなった状態

さらに中医学弁証により肝気の鬱滞と瘀血証、湿証であることが分かったので、肝気を巡らし、全身の血流の改善と水分代謝を促進させました。
肝気を巡らすことで精神の抑圧を同時に改善させたからです。

~中医学による鍼灸治療~

中医学による鍼灸治療は、身体の病態の根本的な改善と真の健康を作ることを常に根本理念にしています。
気を巡らし、ストレスや抑圧を改善させることも、肉体疲労を取り除くことと同じように大切に考えています。

患者様へのアドバイス

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これからは、身体や精神の疲労があまり溜まらないうちに治療をして、いつも元気で健康な状態を保っていきましょう。