患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

顎関節症 – 男性 H.N様38歳 大阪府豊能郡

顎関節症 – 男性 H.N様38歳 大阪府豊能郡

主訴

顎関節の痛み(痛いので口を大きく開けられない)
随伴症状
①首、肩、肩甲間部の激しい痛み
②腰及び鼠径部の痛み
③足の裏の痛み

現病歴

gakukansetsu3平成29年、今年の1月より、口を開けたら痛いので、大きく開けられなくなった。左顎の部分に限局として痛みがある。
20代後半(28歳頃)、激しい運動をした後(特にバスケ)、口が開けなくなった。バスケットを終わって、食事に行くが、口を大きく開けられず、困った。
翌日は、症状は回復していた。3年ほど前より(35歳)、時々口を大きく開けたら、痛みが出るようになった。継続して痛くなったのは、今年の1月からである。
激しい運動をやめて、ジムに通っているが、体中のあちこちが痛い。首を前に曲げると、首から肩、肩甲骨内側に激しい痛みがはしる。この痛みがずっと続いて、酷くなる一方である。それと並行して、28歳くらいより、左右両鼠径部が痛くて、運動の時に足を前に出しにくい。
足の裏が、どこをさわっても痛い。
小学生の時はラグビー、中学生はバスケット(部活)、高校ではラグビー(部活)、20代はラグビー・バスケット、30代前半はフットサル・バスケットをやっていた。

現象

顎関節について

口の開口、指2本半で疼痛。それ以上開けると鋭く痛む
首、肩、肩甲間部について
首:肩甲挙筋、中斜角筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋、上肢帯筋、三角筋(特に三角筋前側繊維)、菱形筋、後背筋、小胸筋、大胸筋の著明な筋緊張を認める
鼠径部について
腰部筋群(脊柱起立筋)の膨隆、腰方形筋、殿筋郡(特に中殿筋)、梨状筋の筋緊張著明

足底について

足底筋群の筋萎縮を認める

方解

gakukansetsu4顎関節の不調は、小さい頃より始まっており、主に運動時に顎を噛みしめる為、起こったものと思科する。運動時は、気合いを入れて頑張ろうとすると、奥歯を噛みしめて、どうしても顎に力が入りやすい。口を閉じる筋肉(閉口筋)が緊張して、とてもかたいところと、粘っこい筋肉のところがあり、慢性的になっていることが伺える。
口を開けるのは通常4,5回で、指4本まで開き、疼痛もとれるが、
なぜなら、顎関節の不調が小さい頃よりはじまっていること、運動が好きで、運動時に無意識に気合いをいれて歯を噛みしめる習慣が付いていること、激しい運動を現在まで長く続けていることを考慮すると、このケースでは10回またそれ以上の治療回数が必要と見立てた。身体中の何処もかもに痛みが生じている。首を後ろに持ち上げると、肩甲間部に激しい痛みが走る。

通常適度な運動すれば、疲労が回復されるが運動量が激しく疲労が少しずつ溜まってピークに達している状態と考えられる。
顎を噛みしめるためか、顎関節の異常な緊張を認める。さらに首、肩、肩背筋群が非常に緊張し、腰部筋群の緊張も強い。特に殿筋群(中殿筋、梨状筋)の緊張が著明である。鼠径部の痛みは、腰部及び殿筋群の緊張により神経圧迫が起こり、鼠径部に痛みが出ているものである。
足の裏の痛みは、足底筋群の筋緊張のためもあるが、全身のコンディションの現われである。全身の筋肉が疲労しすぎている症状である。
運動と強化のしすぎが認められ、それに対し、まずは鍛えることより、全身の筋緊張をリラックスさせることを中心にするストレッチや呼吸法を行なう。

治療方針

顎関節の閉口筋、開口筋を徹底して緩める
首及び肩背筋群の緊張を改善させる
腰部及び殿筋群の筋緊張を改善することで、鼠径部の痛みを取る。
足底の痛みについては、足底筋の筋緊張を改善させる
全身の体調を整える