患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

五十肩 – 男性 T.W.さん 年齢43歳

患者様
京都府相楽郡 在住 男性  T.W.さん 年齢43歳
初診日 平成27年4月22日

主訴

〇五十肩

〇肩こり

〇肩の鈍痛

随伴症状

〇膝の痛み

現病歴

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2月の終わり頃より、突然右肩が痛くなり、一日中鈍痛を感じます。肩がすごく凝り、すっきりした日が一度もありません。たまに痛みで夜中に目が覚めます。

5年前にいきなり五十肩になり、1年ほどすごく苦しんだので、前回のように長引くのが嫌だったので、ネットで色々調べた結果、当院の鍼治療を受けてみたいと思い、来院いたしました。

また、長年、悩んでいる膝の痛みがあります。太ももが重く、はれぼったい感じが20年来続いています。色んな治療をしましたが、改善されなかったので諦めていましたが、同時に治療をお願いします。

現象(写真、矯正)

右上腕の軽度の外転障害を認める。外転角160~170度

骨盤、左の寛骨が前上方変異 左AS カテゴリー1

肩甲患部、首・肩・背中・腰・一連の強い筋緊張を認める。
特に右肩甲骨上方に強い筋緊張がある。
左右肩引(菱形筋)の強い筋緊張、凝りを認める。

膝、大腿四頭筋、腸脛靱帯、内停筋群の強い筋萎縮及び筋緊張を認める。
大腿の内中外の筋群にそれぞれ硬結と筋萎縮、筋繊維の弾力低下を認める。

原因の分析

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三角筋、内側中間外側繊維に軽度の筋萎縮、筋緊張を認める。首、肩、背中、腰の一連の筋肉の緊張、凝りを認める。特に肩甲患部の菱形筋は凝りが酷く、右肩甲骨上部の緊張を起こしている。そのため、右上腕の軽度の外転障害を引き起こしている。筋肉はキメが細かく、良質のものであるが、肉体的過労や精神疲労などがだんだん蓄積していったものと思われる。忙しい仕事で重要なポストにいれば、いくらタフでも疲労はたまる。

膝関節の疼痛については、超慢性的なものであるが、骨盤の変位と、軽度の股関節の過外転を認める。それらは、慢性的な筋緊張を継続させたことを否定できないので、矯正が必要である。さらに、大腿四頭筋及び内転筋群、腸脛靱帯の慢性的な筋緊張が膝の痛みの原因である。

治療方針

首、肩、背中、腰、大腿、ふくらはぎ、全身の筋緊張を取り除く。骨格を矯正し、肩及び膝への負担軽減を図る。特に肩の痛みについては、五十肩として肩の筋群だけに対応するのではなく、背中、腰、首、肩、全体の筋緊張を取り除き、筋肉の緊張・弛緩のバランスを取ることで、肩関節の外転の障害を取り除く。

膝関節に関しては、骨盤矯正と、股関節の矯正を行う。さらに、並行して大腿四頭筋、内転筋群、腸脛靱帯の筋緊張を取り除き、長年の膝関節の疼痛を改善させる。

経過

初診4月22日に始まり、6月18日、15回の治療で肩関節の外転障害及び肩の重み及び凝りが改善された。同時に、膝関節の疼痛も改善した。

私の考え方

bensyou
慢性的な疾患ほど、あらゆる角度から原因を探って、全身的な治療を施すと部分の痛みや慢性的な疾患も驚くほど早く改善していく。慢性的な疾患を治すのが難しいのは、部分の障害の改善に固着しているからである。身体は数珠つなぎに繋がっており、互いに関連性を持っているので、全身のバランスを取り、部分の負担を取り除くことが大切である。

今回仕事の都合で2ヶ月以内にという御希望だったので、治療の期間が限られている分、治療の回数は15回に設定していただき、治療に少し余裕を持たせた。その間、熱心に通っていただいたので、一連の症状が改善された。