患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

野球肩 – 大阪府池田市在住 男性 T.T.さん 年齢30歳

患者様
大阪府池田市在住 男性 T.T.さん 年齢30歳

主訴

〇野球肩(球を投げた後、肩がすっぽ抜けたような感じがして、痛くて投げられない)

随伴症状

〇首、肩のこり
〇偏頭痛

現病歴

去年の春先より肩に疼痛が起こり、アップしてからだんだん強く投げると痛みが取れていたが、今年に入ってアップの状態で肩に疼痛が起こり、球を投げた後、肩にすっぽ抜けたような感覚が起こり、投げられなくなりました。

小学校から高校まで野球を続け、社会人になり2011年の秋より草野球チームに入り、ピッチャーとして投げ始めました。練習は週1、2回で、試合は4シーズンで10~15試合、1試合5~7イニング、80球ほど投げます。

野球をどうしても続けたいので、インターネットで治療所を探しました。いろいろ見ましたが、当院の鍼治療が1番良いと思い、来院しました。

仕事を初めて5,6年、肩が凝るようになりました。またパソコンに向かっていると右側頭部がズキズキし、偏頭痛が起こります。仕事の肉体的過労や精神的ストレスがとれないまま、野球をしたからだと思います。できるだけ早く野球ができるようになりたいと思います。

現象(写真、矯正)

〇右三角筋内側繊維の緊張萎縮を認める。
〇肩から首、首から背中にかけて強い筋緊張萎縮を認める。
〇腰背筋群の緊張萎縮。

原因の分析

肉体的、精神的疲労が残存したまま野球を始めたこと。社会人になって運動や基礎トレーニングをする時間がなくなり、ぶっつけ本番で基礎体力や筋力の低下が起こっている。基礎体力が十分でない身体では、軸の安定やフォームのバランスを崩す。

投げる前から右上腕に負担がかかる体勢になっているということがまず大きな原因の1つと言える。

2つ目は、仕事の疲労により上腕、首、肩、背中、腰に筋緊張や筋萎縮が蓄積していたことによる。そのことによってアップをしても十分に血液の流れが腕や背中、首、肩、腰そして下半身に行き届かず、無理な力が上腕にかかった為だと考える。

治療方針

〇首、肩、背中、腰の筋緊張を解し、右上腕三角筋および上肢帯筋、上腕の筋群の全ての筋緊張を取り除く。

全身の筋緊張を取り除くことにより、肉体疲労を改善する。

〇五臓六腑の働き、気血水の流れを整え、免疫力をアップし、ストレスや精神疲労を取り除く。ストレスや精神疲労をほどよく改善できるのは、鍼灸治療の醍醐味である。

経過

初診6月6日
治療の終了6月24日

五回の治療でほぼ全ての症状が改善したので、一旦治療を終了します。
今後は日常生活の疲労や実際に投げてみての肩の具合により、適時調整を行うことにしました。

私の考え方

仕事をしながらスポーツをすることは、ストレスの発散になり健康の為にもとても良いことです。仕事で首や肩・背中・腰、ストレスがあまりにたくさん溜まったのは、週一とか月一とか運動をするとかえって負担になるケースもあります。ストレスは発散できますが、身体に溜まった疲労が抜けきらない場合があります。その場合、上半身に力が入って、下半身の力が抜けているので、軸がぶれやすくフォームが安定しません。また年齢が高くなるほど、いくら練習をしていても基礎体力の低下が起こってきます。スポーツのための練習もいいのですが、スポーツをするための土台となる足腰の鍛錬も大切です。
仕事のカバンなどを持たずにフリーな時間で、週末に一時間を目安に30分以上歩くことを続けると、足腰の筋力がついてきます。是非お試し下さい。続けていると、だんだんもっと歩きたくなって、歩く距離が増えてくるからです。