患者様の病態分析

臨床報告とは

臨床報告とは、一つ一つの病態をどのように分析し、診断を下し、そのもとに、どのような治療を施し、その経過を示し、どのような結果になったかという報告です。

様々な分野の臨床報告を残すことによって、後世の臨床家の手引き・参考としてほしいと願っています。

治療家であれば、どのように治療して良いかという悩みは、誰しも同じようなところに行きつきます。難しい疾患になる程、どうしたらよいのか分からないことも多く、悩みも多くなります。鍼灸が医学として発展するためには、臨床家や、これから臨床を目指す鍼灸師が、このような壁に当たった時、本当に参考になる手引きがほしいと思うのは誰しもです。

私は中医学弁証を学び、中国の大学院で学んでいる勉強を学ぶ機会を得ました。中国の臨床例の多さは、日本と比べるととてつもなく多くあり、その臨床例が私の成長に大きく繋がりました。残念ながら日本には、参考となる臨床報告がほとんどなされていないのが現状です。

患者様の協力を得て臨床報告をあげていきますので、後世の臨床家たちの参考となれば幸いです。

顎関節症 – 男性R.S.さん年齢14歳

患者様
大阪府豊中市在住 男性 R.S.さん 年齢14歳

主訴

〇顎関節症

随伴症状

〇首肩の凝り
〇不眠
〇めまい
〇食欲がない
〇疲れやすい

現病歴(現在の疾病が発生する経緯)

gakukannsetu
6月に入り、顎の開口がしづらかったり、開口時に痛みがありました。
6月12日、夜より痛みが出て、口を開口することができず、3日間何も食べられない状態となりました。
水を飲んでも頸部の筋肉が痛み、水さえ喉を通すことができなくなりました。
歯科口腔外科を訪れましたが、改善されませんでした。
どうすればよくなるだろうと困り果て、インターネットで当院を見つけて来院致しました。
現在、サッカーや空手、学校の勉強にも熱心に取り組んでいます。テスト勉強で、身体はかなり疲労気味です。

現象(写真、矯正)

〇口の開口、指2本分
〇右顎関節に開口時に強い疼痛
〇首、肩、肩背部の強い筋緊張を認める
〇顎関節の開閉筋の強い筋緊張を認める

開口筋

S__2023456_修正-293x300
開口筋:顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋、外側翼突筋(下頭)
口を開ける筋肉で、顎の下にある前頸筋という筋群である。
口を開けるときにはそれほど大きな力は必要としないので、閉口筋と比べ、小さく薄
い筋肉で構成されているので、強い筋力を発揮できない。
口を閉じるときに働く閉口筋(咀嚼筋)が緩んでいないと口を開けることができない。

閉口筋

02
閉口筋:咬筋、側頭筋、外側翼突筋(上頭)、内側翼突筋
側頭筋は下顎を引き上げる最も強大な筋です。強力なけんを持ったこの筋は、下顎骨に達しています。内側翼突筋は、下顎骨をあげ、また下顎骨の前方に移動するのを助けます。その他、この筋は下顎骨を外側に回旋する際にも強力に働きます。外側翼突筋は下顎骨の全ての運動を助けるように働く筋です。咬筋は側頭筋と同様に口を閉じる強力な筋で、下顎骨を上げ(上げて歯をかみ合わせ)ます。
      

原因の分析

開口筋と閉口筋の緊張

〇開口筋である舌骨下筋は全てが協力的に働き、甲状軟骨を舌骨に近づけたり、口を開ける際に咽頭軟骨と舌骨を固定し、これらを下方へ引く。肩甲骨や胸骨など胸部や肩の骨にも付着している。そのため開口筋の緊張により、水などの流動体でも通せなくなったのである。

〇閉口筋郡が激しく緊張して口が開口できなくなっている。それは閉口筋の力の方が遙かに強いので開口できないのである。

〇首、肩の筋肉が異常に凝って特に右肩の筋緊張が著明である。これはかなり前からのもので、クライアントは空手やサッカー、勉強も頑張る方で、少し身体のダメージと精神的な疲労が一緒に重なったと思科する。
そのため首、肩、背中の筋肉が強く慢性的に緊張し、開口筋や閉口筋の強い筋緊張をもたらせた。
〇それ以外に日頃のかみ癖や、歯をかみしめるなどが関与する。

そのため、頸椎の3、4番と第一頚椎が右後方回旋を起こしている。

〇顎関節は右から左にわずかに歪んでいる。(右上顎枝が下がり左上顎枝が上がりっている。)

治療方針

顎関節の閉口筋、開口筋の筋緊張を改善させることが、第一目的である。第一目的を達成するために、首、肩、背中の筋肉の緊張を鍼でとり、頸椎の矯正を行う。そのことで、開口筋、閉口筋の筋緊張をかなり改善することができる。局所の治療である開口筋や閉口筋の筋緊張の改善を鍼でていねいに取り除いていく。

経過

6月16日初診
6月26日最終
四回の治療で口が前開することができるようになり、疼痛も改善したので治療を終了した。

私の考え方

bensyou
鍼治療・矯正については、中学生だとまだ恐怖心の方がまさると思うのだが、大人が受けるときのように私の鍼を全然平気で受けてくれた。
なので、とても治療がしやすかった。
おかげで、4回の治療で完治することができた。
空手やサッカーを頑張っており、度胸ができているようだ。
その上、勉強も熱心にしているようで、中学2年で英検3級も受かっていると聞いた。
早く運動や勉強ができるようになってよかったと思う。

さて、顎関節の治療で近い歯医者に行くか、口腔外科に行くか、大きな病院に行ったら良いのか、個人の病院に行ったらいいのか、迷う人が多い。
顎関節症は、上記のように肉体疲労や精神疲労が重なり発症することが多く、顎関節の開閉筋だけでなく、首、肩、背中の筋肉などが極度に緊張している場合が多い。
鍼灸治療で、肉体や精神の疲労を取り除く意義は大きい。さらに、局所の治療にしても筋肉そのものを直接緩めることができるのである。
急性の場合であれば、3ないし5回の治療で改善することが多い。慢性的なものは10ないし15回程度で、特に重度のものを除けばすっかり改善するものである。