患者様の病態分析

2017年11月30日

[頸椎ヘルニア] 女性

[頸椎症の疑い]首の向きを変えると、左上腕から肘及び前腕の筋群に激しい痛みが起こる

初診

初診  2018年 1月22日
55歳  男性

主訴

首の向きを変えると、左上腕から肘及び前腕の筋群に激しい痛みが起こる

診断名

  • 胸郭出口症候群(頸椎症の疑いあり)

随伴症状

  • 首、肩、背中の凝り

現病歴

neck
本年1月11日、新年会の後、首、肩、左腕に少し違和感がありました。翌日より、本格的な違和感が起こり、首を動かしたり、首の向きを変えたりするだけで、首から左上腕、肘、前腕筋群に鋭い痛みが走るようになりました。 

 車の運転にとても支障が出ています。首を動かすと、腕まで痛みが走るので、頸椎カラーで固定しています。固定すると、少し楽です。日常生活で首の向きを変えることで、激しい痛みが起こり、仰向けに寝ると、枕を高くしないと痛みで眠ることが出来ません。横向きになって頭を前に倒して、丸くなって寝ると、痛みは起こりません。

 放っておくと治るかなと思い、1週間程我慢しましたが、痛みがだんだん酷くなり、これはいけないと思い、1月22日(月)、当院に来院いたしました。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
byoutai02

~徒手検査~

  • 左回旋痛→運動障害あり(30度)、痛み増強
  • 左側屈痛→運動障害あり(30度)、痛み増強
  • 右回旋痛→痛みがあるが軽度
  • 右側屈痛→運動障害軽度あり、痛み増強 
  • 後屈痛→後屈すると、一番激しく痛みが増強 
  • 前屈痛→痛みが増強 
  • スパーリングテスト(陽性):左へ側屈軽度行なっただけで、激しい痛みが左上腕から前腕まで走る
  • ライトテスト(陽性):左脈が消失する  
  • 仰臥位で寝ると、頭を高くしないと激しい痛みが起こる 
  • 側臥位で首を前に倒して丸めて寝ると、痛みは起こらない。
  • 腹臥位で寝ると、すぐに痛みが起こり、5分以上は維持出来ない。
  • 下記の筋群に著しい筋緊張が認められます。
    • 左頸部筋群
    • 肩の上の僧帽筋の盛り上がり
    • 左頸部より肩甲骨の外上角
    • 左菱形筋群
  • 指先のしびれはなく、握力の低下もありませんが、首の向きを変えることで痛みが起こり、その痛みが急激で、とても激しいので、日常生活がかなり制限されている。

既往歴として、以下の疾病がある。

 前年度、平成29年4月に右肩に五十肩を発症した。9月より、五十肩に胸郭出口症候群を発症し、激しい痛みとしびれがあったが、12月の末には痛みもしびれも、完治していた。快復力は良い方だが、昨年に続き、まもなく今度は左腕に痛みが発症している。首、肩に著しい筋緊張も認められる。

中医学による病態の把握
byoutai04

    ~舌診~

  • 舌体 動きは正常
  • 舌色、紅舌 やや暗 熱証であり、血流の低下を想定できる。
  • 舌苔、薄白苔、やや膩(水分の代謝がやや悪く、少し湿気がある)
  • 舌下静脈の怒張、軽度あり(身体内のいずれかで血流の低下や悪化があることが分かる)
  • tongue out

    ~脈診~

  • 毎分、 脈
  • ~気血津液弁証~

  • 痰湿証
    身体内は水分代謝がやや悪化し、少し湿気気味である。
  • 瘀血証
    身体内の一部の血液の流れがやや悪化し、慢性化していると判断する。

方解

byoutai09

昨年も五十肩と胸郭出口症候群を引き起こした。回復力がはやく6ヶ月程の短期間でいずれも改善され、痛みを感じなくなった。

今年に入り、別の箇所に痛みを感じ来院された。前回は右腕の痛みとしびれであったが、今回は左腕、左肘の疼痛である。

原因は、頸部及び胸郭の筋群の緊張による神経圧迫と思われる。

筋肉による神経圧迫により、腕や手に痛みやしびれが走る胸郭出口症候群なら改善が早く見込めるのだが、徒手検査で、首の運動痛やスパーリングテストが陽性になり、痛みが激しく、ちょっとした首の角度で、痛みが増強することから頸椎症の疑いもある。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
byoutai03

頸椎症の疑いがある。

頸椎症からくる神経痛は、改善までの期間が長くかかり、かつ再発しやすい、治療は定期的に行い、頸部や肩背部、胸郭の筋群の緊張を取り除き、神経圧迫による神経の炎症による痛みや痺れを引き起こさないように日常からコンディションを整える必要がある。

治療としては、頸部及び胸郭、肩背部、腰部から頸椎までの脊柱全体を一つのものととらえて、全身に鍼灸治療で凝り固まった筋肉をほぐし、血流の改善を促し、筋肉の緊張による神経圧迫を取りのぞいていく。

神経を維持するための栄養も血液である。鍼灸治療で筋肉の深部まで血流が良くなることが、神経の興奮や炎症を鎮めることに繋がる。

また頸椎症の確認のため、レントゲンを撮る必要があり、提携先の整形外科に紹介状を書いた。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第4回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
背中の凝りや痛みは改善されてきたが、頸椎の角度や動きで、激しい痛みが走る。頸椎のコルセットをしていると、少し楽である。

第9回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
70%~80%、痛みが治りました。
体調の変化はありますか?
首や肩の凝りが、よ程改善されました。

第10回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
大分良くなりました。痛くない時もあります。

第11回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
ほとんど痛みはなくなりました。ありがとうございました。あんなに痛かったのに、あの痛みは噓のようです。
~院長の一言~
ゴールは目前ですね。今日は再発しないための治療を行います。

第12回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
痛みはもう全然ありません。
体調の変化はありますか?
ありません。
本日一番取りくんでほしい治療は何ですか?
肩こりを治してください。
~院長の一言~
これで今回の治療を終了いたします。筋肉の深部までほどよく緩んだので、神経の圧迫が取り除かれました。痛みの症状はもう出ないと思います。3週間後に、一度診せてください。これからはメンテに切り替えましょう。

私見

bensyou
昨年より体調を崩し気味であり、新陳代謝や血流の低下、また筋肉の弾力や柔軟性が低下し、身体の疲労の回復力が悪くなっている。
これは、年齢的なものもあり、50の後半を過ぎると、ゆるやかに筋肉の求心性萎縮が高まる。これは一つの老化現象である。

老化現象は求心性萎縮のエネルギーをもっている。
放置しておくと、求心性萎縮のエネルギーは段々と強まってゆく。

shizen散歩をするなど身体を適度に動かしたり、軽いリズム運動、ストレッチや呼吸法を行うと求心性萎縮のエネルギーを弱体化させることができる。
音楽も良し、スポーツも良し、没頭できる楽しい趣味を作ることもその一つである。
何事も適度に行い、度を過ぎないことが大切である。
毎日、5キロ、10キロと歩く人もいるが、筋力は強化されるが、疲労が蓄積されると筋肉は硬化し、逆に身体にとって不健康となる。
歩いた後は必ずふくらはぎや太股、腰や臀筋群の緊張を叩いたり、マッサージしたり、ストレッチを行なって必ず筋肉の疲労を取っておくことが大切である。
労働すれば筋肉は疲労するのである。
鍛えても筋肉は疲労するのである。
50歳後半からの健康は、鍛えることと癒すことを並行して行い、一日の疲れはケアを行なってその日のうちに取り、明日へ繋げてゆくことが大切である。

[五十肩]ズボンを上げ・下げする動作で上腕に激痛がはしる ブラウスを着る時、激しい痛みが起こる

初診

2018年3月14日  
52歳 女性

主訴

ズボンを上げ・下げする動作で上腕に激痛がはしる
ブラウスを着る時、激しい痛みが起こる

診断名

  • 五十肩(肩関節周囲炎)

随伴症状

  • 肩が重い

現病歴

kata_illust
五十肩になり、1年以上が経過しています。いつか治るだろうと思って辛抱しておりましたが、ズボンを上げたり下げたりする動作で、上腕に激痛が走ります。ブラウスを着る時も、上腕が激しく痛み、かなり苦痛です。かなりストレスになっております。
朝から夜まで家事と仕事をしているので、寝るのはいつも午前2時半くらいになります。
このまま放っておいても、段々悪くなるだけで良くならないと思い、ネットで調べて当院の記事がもっともわかりやすく、たくさん書かれていたので来院いたしました。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
byoutai02

  • 三角筋の筋の萎縮(特に前側繊維)
  • 外側上腕筋間中隔の窪みが硬くなり、屈筋群と伸筋群の境がなくなっている
  • 棘上筋、棘下筋の筋緊張、萎縮 著明
  • 外転挙上130度で激しい疼痛が起こり、それ以上挙上できない。外転挙上して腕を下に戻す時、110度~80度のところで激しい疼痛が起こる(有痛弧を認める)

    有痛弧とは

    有痛弧は肩峰下を腱板が通過するときに生じる痛みであり、一般的に肩関節60~120度の間で痛みを強く感じる。これは肩甲骨が痛みを回避するために上腕骨よりやや遅れて動くためである。
    上腕を外転する課程で、上腕骨と肩峰の間に腱板の一部や肩峰下滑液包などが挟み込まれ、繰り返して刺激が加わると滑液包に浮腫や弾力低下が起こる。

  • 頸部筋群、肩背筋群の筋緊張 著明
  • 腰部筋群の筋緊張を認める

中医学による病態の把握
byoutai04

    ~舌診~

  • 舌体 老舌(ややしまっている)で少し動きが低下
  • 舌色、紅舌
  • 舌苔、膩苔で色は白いがやや煮詰まっている。痰濁内停(これは、水分の代謝が悪くなり、体内に水分が長く留まり、古くなって体内水分が粘り、汚れてやや熱せられていることを示す)。
  • 舌下静脈の怒張、著明(脈絡が網目状になっており怒張がある。このことは、体内の血流が慢性的に悪化していることを示す。)
  • tongue out

    ~脈診~

  • 毎分、60 濡脈
  • ~気血津液弁証~

  • 気滞証
    気の流れの停滞により、推動力が低下し、血液と体内水分の流れが悪くなり、それらの停滞を引き起こしている。
  • 痰湿証
    苔は厚くないがやや膩苔であり、舌はしまり、やや動きが悪く、苔が舌体内に入り込んでいる。
    それは濡れたタオルを絞ると水が出るのと同じで、古い水分が体内に停滞していることを示す。
  • 瘀血証
    身体内の血液の流れが悪化し、慢性化していると判断する。

方解

byoutai09

慢性的な痰湿及び瘀血証です。夜寝るのが遅く、傷ついた筋繊維が修復されない状態です。
成長ホルモンは20歳を過ぎれば修復ホルモンとして午後10時~午前2時までの間に分泌され、午前12時がピークになると言われています。
1年以上経過しても悪化しているのは、体質と夜寝る時間が遅いことが関係しています。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
byoutai03

鍼治療により、全身の血流改善を行います。更に水分代謝を促進します。気の流れをスムースにして、五臓六腑の働きを高め、自然回復力を高めます。全身を巡る気・血・水の流れを良くすることで、局所の痛みである上腕部の改善を促進させます。緊張、萎縮した筋肉をひとつひとつ丁寧にほぐして行きます。全身の気・血・水の流れを改善するツボは以下の通りです。

合谷・太衝:気血の流れを改善
足三里・豊隆・三陰交:水分代謝を促進

ストレスを緩和し、全身の気・血・水の流れを改善し、自然回復力を高めることが部分である痛み、すなわち五十肩という症状を治す決め手なのです。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第1回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
翌日、かなり痛い角度が減りました。日常動作が戻りました。
体調の変化はありますか?
肩の重い感じがやわらぎました。画期的な変化です。とても楽になりました。

[左右大腿部の疼痛]首・肩・背中・腰・臀部・太股の疼痛と強ばり

初診

2018年2月15日  
38歳 男性

主訴

首・肩・背中・腰・臀部・太股の疼痛と強ばり

診断名

  • 疲労の積み重ねにより、五臓六腑の生理機能が低下し、気・血・水の流れが悪化し、全身の慢性の筋緊張と筋疲労による疼痛と強ばりを引き起こした。
    そのため、治療しても体調が悪化するばかりで、回復しなくなった。それは、生まれながらにして持つ自然回復力が低下したためである。
  • 内臓にも影響し、胃腸機能が低下した。そのため、食欲がなくなった。

随伴症状

  • 左右大腿部の疼痛
  • 疼痛による睡眠障害

現病歴

kansetsutsuu_koshi
建築の会社の営業職を担っております。昼は外食で仕事の合間に急いで食べるため、どんぶりやパスタなどの単品や揚げ物など、脂っこい物やカロリーの高いものが多くなっています。
数日前、風邪をひいて、風邪が治った後も疲労がたまっていたので、仕事を休みました。そのあと、首・肩・背中・腰・臀部・太股が痛くなり、頭痛が起こりました。整骨院に行って治療して、首の痛みと頭痛は治ったのですが、背中と腰・臀部・両太股の痛みと強ばりが続いて、まったく回復しなくなりました。
胃痛があり、食欲が無くなり、内科に行きました。そこでは、胃腸薬と痛み止めを処方され、痛みは治まりました。しかし、夜、仰向けになって寝ると、背中や腰がすぐ痛くなって、痛みで目が覚めます。
寝返りを打たないと、眠ることができません。自分の体重がかかっている所がすべて痛く、イテテテという痛みで、この体勢は無理という感じで、身体の置き所がありません。腰の下、お尻にかけてズキッとする痛みが走り、両太股が強ばっています。

仕事はストレスも多いのですが、やり甲斐があり嫌いではありません。しかし疲労が蓄積されています。精神的にも気を遣って、疲れています。
いつもの体調とは明らかに異なり、回復しそうもない不安を感じました。母が行って良くなった鍼灸整骨院に行って、鍼灸治療を受けるしかないと思い、来院しました。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
byoutai02

以下の筋群に強力な筋緊張を認めます。

  • 頸部筋群(板状筋・頭首半棘筋・前中斜角筋・頸部脊柱起立筋・後頭下筋・胸鎖乳突筋
  • 上腕部(三角筋の萎縮・外内上腕筋間中隔の肥厚
  • 上肢帯筋(棘上筋・胸郭筋・大結節の中間・下・小面
  • 肩背部(僧帽筋・菱形筋群
  • 腰部・臀部(腰部脊柱起立筋・腰方形筋・内外腹斜筋・腹横筋・大臀筋・中臀筋・梨状筋
  • 大腿部(大腿四頭筋・腸脛靱帯・ハムストリングス
  • 下腿部(前脛骨筋・腓腹筋・ヒラメ筋・後脛骨筋・長母指屈筋

中医学による病態の把握
byoutai04

    ~舌診~

  • 舌体
  • 胖大舌(舌が大きくて分厚くなり、ややプヨプヨしている)

  • 舌色
  • 淡紅舌

  • 舌苔
  • 薄白膩苔・白い苔が舌全体に多く、やや粘っている

  • 舌下静脈の怒張、著明
    脈絡が網目状になっており怒張がある。このことは、体内の血流が慢性的に悪化していることを示す。
  • tongue out

    ~脈診~

  • 毎分66 渋脈
  • ~臓腑弁証~

  • 脾気の機能低下による食欲不振と水分の代謝障害。
  • ストレスが長期にわたって少しずつ溜まり、肝気が鬱滞している。
    そのため、全身の血流が悪化し、水分代謝も低下している。
  • ~気血津液弁証~

  • 気滞証
    気の流れの停滞により、推動力が低下し、血液と体内水分の流れが悪くなり、それらの停滞を引き起こしている。
  • 痰湿証
    苔は舌全体に薄く広がり、やや粘っこい。
    このことより、身体内の水分代謝が悪化し、慢性化して長期にわたることを示す。
  • 瘀血証
    身体内の全身の血液の流れが低下し、慢性化していると判断する。

方解

byoutai09

仕事のストレスや緊張で、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積されている。肝気が鬱滞し、全身の気・血・水の流れが停滞している。
さらに肝気の鬱滞は、脾気の生理機能に影響し、胃腸機能の低下を引き起こした。外食などが重なって、脾気がさらに低下し、胃腸痛と食欲不振をもたらした。

肝気の鬱滞により、体表面の血流が低下し、血液による筋肉の滋養ができなくなり、全身的な筋緊張を引き起こしている。
脾気の低下により、体内水分が停滞し、筋肉の深部は栄養されずに粘土状になっている。
筋肉の表面は、繊維が細くなってバリバリと硬く、深部にいくほど粘土状になっていって、気・血・水による筋肉の滋養不足を引き起こしている。五臓六腑の生理機能の低下により、自然回復力が低下し、体調不良を引き起こしているのは明らかである。

自然回復力について

自然回復力とは何か、自然界の川を例にして述べてみる。川は、水が流れる事によって、川の水が汚れる事を自然に防いでいる。自ら行う自浄作用である。
しかし、人間によって栄養価の高い汚水が大量に川に流されると、老廃物が蓄積し、水面下でガスが発生する。それがくり返されると、川の流れは低下し、水は濁る。自浄作用を上回った栄養物が流されるためである。

筋肉の強ばりや痛みがもう回復しないのではと感じたのは、腰や首・肩・臀部・太股などの部分の痛みの原因が重症だからではない。確かに、それぞれの部位は、緊張こそ強く表面の筋肉が強ばり、また深部の筋肉は水分代謝が悪く沼っているが、全身の機能の低下がみられるだけである。
器質的な障害は何も無く、病態は軽症である。
全身の血流と水分代謝を改善することが、何より大切である。鍼灸で五臓六腑の生理機能を改善させ、全身の血流と水分代謝を改善させれば、筋肉の痛みも強ばりも回復する。更に、本来の健康な身体を取り戻すことができる。単に自然回復力の低下による機能的な疾患であるからだ。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
byoutai03

全身の自然回復力を高めれば、部分の機能は回復します。
なので、心身の生理機能を高めていきます。肝気の鬱滞を改善させ、疏泄機能を高め、気・血・水の巡りを良くしていきます。

肝には疏泄という働きがあります。疏泄とは、全身の気の働きや運動の仕組みを調節し、新陳代謝を促進させるということです。疏泄の疏は、流暢の意味で、サラサラとよどみが無く、スムーズに働いている様子を表しており、泄は排泄でスッキリという意味を含んでいます。すなわち、人体を構成している基本物質である気・血・水がスムーズに流れるようになるのです。
使用する経穴は、合谷・太衝・内関で、疏泄を行い、さらに足三里・陰陵泉・三陰交を用いて、気・血・水の流れや水分代謝の促進を行います。

中脘・天枢・足三里を用いて、脾気を高め胃腸の働きを改善させます。脾気が高まると、気・血・水の生成もスムーズに行われます。肝気と脾気を調整することで、自然回復力が高まり心身の疲労や筋肉の痛みや強ばりも改善されるのです。

~鍼灸の対処療法として~

対処的な鍼として、首・肩・腰・臀部・大腿部に鍼を行い、直接。筋肉の緊張や強ばりを改善させて行きます。
局所に鍼を打つことで、局所の血流も改善されます。浅部筋群より深部まで丁寧に鍼を通して痛みの改善に繋げていきます。
舌診・脈診より、本来身体が健康で丈夫な方であることが分かります。上記の治療により、局所の痛みを通して、本姓あるべき健康で丈夫な身体に戻すことが、私の鍼灸治療の使命と考えます。

~局所の痛みと全身症状との関係~

部分は、常に全体の影響を受けています。部分の痛みは、全身の状態の表れなのです。部分の状態を診て、全身の状態を改善させる事が大切です。
川の流れで説明したように、川の一部分の汚れを改善させる為には、川全体の流れの何が、どのような状況が、部分に影響を与えたかを診なければならないのです。
対処療法だけで改善されることも多いのですが、全身の状態を診ることで、部分の痛みを取るだけでなく、健康へと導くことができるのです。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第1回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
痛みで目が何度も覚めていましたが、寝返りをうたなくても、朝まで眠ることができました。

第2回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
痛みの強さがマシになっています。

第3回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
全身の痛みが弱くなりました。とくに、あんなに重かった首が動くようになりました。
体調の変化はありますか?
はい。食事にとても気を付けるようになりました。少食の方が体調が良いことに気がつきました。

第4回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
夕方、背中・腰が痛かったが、それ以外は痛みはありません。
体調の変化はありますか?
昨夜はよく眠れました。胃の調子はまだよくないが、普段に近い感覚で身体が動くようになりました。

第5回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?(前回施術後の夜、翌日)
あおむけで寝るのがとても楽になりました。時々腰がカイロをはっているように暖かく感じました。
肩、背中、腰の痛みはまだ感じます。
体調の変化はありますか?
食欲が出てきて、普通に食事ができるようになりました。
量は普通に食べると、胃がもやもや、調子が悪くなります。

第10回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
背中・腰・お尻とも痛みはなくなりました。胃も食べものを制限しているので、そう痛みません。
体調の変化はありますか?
花粉症が一事よりかなりマシです。
その他ご希望があれば、自由にお書きください。
最近、歯を食いしばるくせを意識してても、ゆるめにくい。

第11回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
痛さはほとんど感じなくなりました。
体調の変化はありますか?
全体的に良好になってきました。食事も他の人と同じ量食べられますが、メニューによっては胃がしんどいと感じます。
~院長の一言~
身体全体の筋肉の疲れや凝りも取れて、痛いところがなくなってきましたね。食べ物も気をつけて良く制限できています。花粉症が一事より良くなり、よかったですね。本来の健康な身体までもう少しです。ゴールが見えてきました。

私見

bensyou
本来の健康で丈夫な身体にすることが私の使命と認識しています。
痛みに対する身体の状態はと言うと、機能的なもので、器質的なものは一切無く、重症ではありません。回復する機能が衰えているだけです。だから、痛みを取ることだけなら、ほんの数回の鍼灸治療で改善されるでしょう。
根本改善が東洋医学の理念であり、醍醐味です。

[左手部捻挫]手首を後ろ側に背屈しても、小指側に曲げても、手関節に激しい痛みが走る

初診

2018年2月6日  
34歳 男性

主訴

左手関節の痛み

診断名

左手部捻挫
前腕筋群の緊張・短縮・炎症

現病歴

tekubi
バイクの販売・修理を行う仕事をしております。バイクの修理では、ネジを閉めたりゆるめたりする事が多く、手首をよく使います。ハーレーダビットソンなどの大型バイクは、1台300~400㎏ぐらいあります。限られた敷地の店内で動かすので、前に押したり、後ろにひいたり、回したり、何やかんやで1日中手を使っています。
3年来の手関節の疼痛で、緩快・増悪のくり返しをしております。手首を後ろ側に背屈しても、小指側に曲げても、手関節に激しい痛みが走ります。治ったと思ったら、忘れた頃にまた痛くなり、この3年間痛みをずっとくり返していました。酷くなったのは、ここ2週間で、強い力を入れると激痛が走り、手をつくのも痛くなったので、このままでは仕事ができなくなると思い、ネットで検索して、当院をみて本日2月6日(火曜日)に来院いたしました。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
byoutai02

  • 手関節の背屈痛(角度30度で疼痛)
  • 手関節の橈屈痛
    以下の前腕筋群に緊張・萎縮・炎症を認める。又、それぞれの筋と筋の間溝に炎症。
    浅部から深部まで、特に深部の炎症を引き起こしている。
    ・総指伸筋  ・小指伸筋  ・尺側手根伸筋
    ・長・短橈側手根伸筋  ・腕橈骨筋
  • 上腕二頭筋、上腕三頭筋などの上腕筋群にも緊張・萎縮を認める

中医学による病態の把握
byoutai04

    舌診

  • 舌体
  • 胖大

  • 舌色
  • 紅舌

  • 舌苔
  • 苔小。水多し

  • 舌下静脈の怒張、舌根下部にあり
    体内の一部で、血流が慢性的に悪化していることを示す。
  • tongue out

    脈診

  • 毎分60 滑脈
  • 顔や頭が熱く足が非常に冷たい
    (上熱下寒であり、体内の熱が上半身、とくに頭部に偏っていることを示す)
  • ~気血津液弁証~

  • 気滞証
    気の流れの停滞により、推動力が低下し、血液と体内水分の流れが悪くなっている。
  • 痰湿証
    脾気が低下し、水分代謝が悪化し、慢性化している。
  • 瘀血証
    身体内の一部分の血流が悪化し、慢性化している。

方解

byoutai09

肘および前腕筋群の疲労が蓄積し、慢性化して改善されなくなっている。手指および手関節のあらゆる動きは、前腕筋群で行なっている。ゴルフ肘やテニス肘で見られるような、前腕筋群に過剰な負担がかかったためである。毎日の仕事を通して、疲労が積み重なったものである。

治療方針

~全身的な視点から診た鍼灸治療~
byoutai03

  • 全身の気・血・水の流れと水分代謝を促進させる。

~局所的な鍼灸治療~

  • 現代医学的な病態把握でとらえた筋群の調整を行う。
    浅部から深部まで丁寧に筋肉の緊張を緩め、炎症を取り除き、痛みを改善させる。全身症状より局所的な状態が悪化しているので、徹底的な対処療法を局所に施す。
    自分のもつ自然回復力で回復できるように鍼灸治療を施す。

治療経過

患者様のお声をそのまま記します

第1回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
痛みは少しマシになっています。スコアで言うと、来院した時を10とすると、6です。
本日、一番取りくんでほしい治療は何ですか?
前回と同じくお願いします。

第2回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
かなり楽になりました。痛みをスコアで表すと、10から4になりました。
本日、一番取りくんでほしい治療は何ですか?
引き続き、お願いします。

第3回目の治療

痛みの強さに変化はありますか?
ほとんど痛みはなくなりました。

[慢性頭痛]後頭部が常に重だるく、締め付けられている感じ。

初診

2018年1月12日  
40歳 男性

主訴

16年来の頭痛および全身の筋肉の萎縮緊張

診断名

慢性頭痛

随伴症状

  • 首・肩・胸郭・背中・腰・両ふくらはぎの緊張と痛み
  • 精神的な葛藤と不安がいつもある
  • 全身がだるい

現病歴

zutsuu16年来の頭痛持ちです。
後頭部が常に重だるく、締め付けられている感じです。
頭頂部が張り、頭にいつも緊張感があります。全身の筋肉が緊張、萎縮し、首・肩・背中・腰・両ふくらはぎがとても痛いです。
常に葛藤や不安があり、身体がいつもだるく、どんな薬を飲んでも効果がないので、薬はどんどん強くなって、今服用している薬は、もうこれ以上はないという所まで来ています。脳神経外科では、脳の緊張を和らげる薬と、脳や頭の痛みを感じさせなくするトラムセット、ほかに抗不安剤、抗うつ薬を服用しております。

頭や顔が熱くのぼせ、足が氷のように冷たい

重症化したこの頭痛と身体の緊張と強ばりを何とかしたいと思い、来院しました。食事は、朝は豆乳とバナナのみ、昼はコンビニの弁当、夜は~~です。
すべて外で買ったものを食し、自分で作ることはありません。
食欲も全然ありません。運動は、仕事で動く以外、まったくしていません。小さいときから親からの干渉が強く、親に気に入れられたいという気持ちが今でもあり、不安や葛藤があります。
頭や顔が熱くのぼせ、足が氷のように冷たいです。

現象

現代医学的な方法による病態の把握と、
中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

現代医学的な把握
byoutai02
~首・肩・腕・胸郭・背中・腰・両ふくらはぎの筋緊張著明~

  • 首・胸郭  板状筋、肩甲挙筋、前中後斜角筋、後頭下筋
  • 肩・背中・腰  三角筋、上肢帯筋、菱形筋、後背筋、僧帽筋、脊柱起立筋、腰方形筋、腹斜筋、中殿筋、梨状筋
  • 問診時の回答は、理路整然としており、頭脳明晰でクリアである。

中医学による病態の把握
byoutai04

    舌診

  • 舌体
  • 老舌
    (実証を示し、身体に有害なものが存在することを示す)(気滞・瘀血・痰湿など)

  • 舌色
  • 紅絳舌、紫暗
    (血が熱せられて流れが悪いことを示す)

  • 舌苔
  • 厚膩苔で色は黄色。痰濁内停
    これは、水分の代謝が悪くなり、体内に水分が長く留まり、古くなって体内水分が粘り、汚れて熱せられていることを示す)

  • 舌下静脈の怒張、著明
    脈絡が網目状になっており怒張がある。このことは、体内の血流が慢性的に非常に悪化していることを示す。
  • tongue out

    脈診

  • 毎分72 滑脈
  • 顔や頭が熱く足が非常に冷たい
    (上熱下寒であり、体内の熱が上半身、とくに頭部に偏っていることを示す)
  • ~気血津液弁証~

  • 気滞証
    気の流れの停滞により、推動力が低下し、血液と体内水分の流れが悪くなり、それらの停滞を引き起こしている。
  • 痰湿証
    苔は舌全体に厚く広がり、黄色く粘っこくなっている。
    このことより、身体内の水分代謝が悪化し、慢性化して長期にわたり、身体内の水分は汚れて粘り熱せられ、重度の水分代謝障害があると判断する。
  • 瘀血証
    身体内の血液の流れが悪化し、慢性化していると判断する。

~臓腑弁証~

  • 肝気鬱血
  • 心肝火旺
  • 上熱下寒
  • 方解

    byoutai09

    ストレスにより肝の経絡の気の流れが鬱滞し、長期化し、そのため肝気の鬱滞により熱を生じ火となり、肝火の上炎を引き起こしています。肝火は心火を誘って上炎し、心肝火旺となっています。
    理性的な心と主観的な感情が闘いあって、葛藤を引き起こし、心肝火旺の証となり、16年にわたる慢性的な頭痛を引き起こしています。

    また食生活は非常に偏りがあり、ミネラル・ビタミン・たんぱく質・炭水化物のなかで、ミネラル・ビタミン・たんぱく質が不足しています。
    そのため血液は酸性化し、イライラし易くなり、精神葛藤や精神不安を引き起こしています。

    今も親の期待に応えようとする気持ちが会社の中の同僚や上司また友人の中でも親にすり替わり、同じことをくり返しているので、絶えず過剰な頑張りや自責感にさいなまされています。
    このことが肝気の鬱滞や肝火・心火に繋がり、また気滞血瘀(気の流れの鬱滞による血流の低下)痰湿証(体内水分の鬱滞)を引き起こし、精神葛藤や精神不安を常にもたらし、16年におよぶ慢性的な頭痛を引き起こしています。

    治療方針

    ~全身的な視点から診た鍼灸治療~
    byoutai03

    • 鍼治療で肝気の鬱滞と、心火亢盛を改善させる。
      治療法則は、肝気の鬱滞に対しては、 疏肝理気を行う。
      経穴は、太衝、合谷、内関を選穴する。
      肝火や心火に対しては、清瀉肝火・ 清心瀉火を行う。
      経穴は、足の厥陰肝経の行間、手の少陰心経の少府を選穴する。
    • 気滞、血瘀証に対しては、理気活血を行う。
      経穴は、合谷、太衝、足三里、三陰交を選穴する。
      痰濁証に対しては、足三里、豊隆、三陰交、陰陵泉、合谷、曲池を選穴する。
    • 合谷、曲池で、全身の熱を清熱しながら、水分代謝を促進させる
      最も得意な経穴を選穴し、停滞した水分代謝の促進を行う。
    • 肝気の鬱滞と心火亢盛の証を改善させ、精神や感情の安定をはかる。そして身体内の血流の改善や水分代謝の促進を行う。
      上熱下寒(心腎不交)に対しては、鍼で肝火と心火を瀉し、灸で腎陽を温め、交通心腎をはかる。

    治療経過

    患者様のお声をそのまま記します

    第3回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    全体的にへってきました。
    体調の変化はありますか?
    よく寝れています。
    全体的に楽になってきました。

    私見

    bensyou

    頭痛というのは、病名ではなく症状名です。
    頭痛という病気はないのです。
    頭痛は、脳の中にできた腫瘍や動脈瘤のために引き起こされることも稀にありますが、頭痛の原因の90%近くは、精神活動や生活習慣の中で引き起こされるものがほとんどです。
    いくら強い薬を服用して痛みを止めても、その場限りで原因は何ら取り除かれていません。
    なので、ずっと薬を飲み続けることになり、段々と痛み止めの薬が強くなり、ついには今回のように痛みを感じさせなくする薬まで与えられています。
    大切なことは強い薬を用いて痛みを止めることではなく、頭痛を引き起こしている根本原因を取り除くことです。

    今回の患者様の頭痛も、精神葛藤と食生活の不摂生という日常の生活習慣からもたらされたものです。頭痛は、重症な器質的な大きな疾病は何もなく、正常であります。

    体質が健康から病気になる境目まで悪化しているだけで、まだ健康状態と言えます。本人は、最悪の身体の状態と思っていますが、最悪ではなく、病気の狭間にある健康な身体の状態です。本人が生活習慣を直すこと50%、治療が50%のヒフティヒフティの治療で、この頭痛は改善します。
    6ヶ月を目標に、鍼灸で証を改善させ、同時にご本人の精神活動および食生活を中心とした、生活習慣のすべてを改めれば16年来の頭痛持ちという年数に関係なく、改善されるものです。

    前向きな方ですので、ご自身の日常生活の中の特に食事もすぐに改善されているようですので、体質も良くなっていき頭痛の起こりにくい身体をご自身でも作っていかれています。

    [パソコン肘]手を普通に使っていると、突然激痛が肘の外側にはしります。

    初診

    2018年1月18日  
    30歳 女性

    主訴

    右肘の痛み

    診断名

    パソコンの使用による肘の痛み

    随伴症状

    • 便秘

    現病歴

    computer_woman昨年春先から、右肘が痛みます。一日の仕事の中でパソコンを6時間ぐらい使います。マウスを動かすことが多く、右手の人差し指と中指を交互に頻度高く動かし続けております。
    仕事の疲れやイライラを取り、ストレス解消のために、家に帰ってからもネットやゲームを行います。3時間ぐらいはパソコンを離せません。
    昨年の4月、病院で注射を打ってもらって、いったん痛みは治まっていました。

    突然激痛が肘の外側にはしります。

    その後、9月ごろに再発し、車の運転にも仕事にも、また日常生活の様々なことにも支障が出始めました。手を普通に使っていると、突然激痛が肘の外側にはしります。また昨年の末より便秘気味で3,4日に一度しかスムーズに排泄できなくなりました。
    現在は、肘をまっすぐ伸ばすだけで痛く、このまま症状が進んでゆくと、仕事もできなくなると思い、インターネットの検索で当院を知りました。
    今年1月18日に来院いたしました。注射や薬で一過性に痛みを取るのではなく、根本的に治さなければいけないと思ったからです。

    現象

    現代医学的な方法による病態の把握と、
    中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

    現代医学的な把握
    byoutai02
    ~触診による検査~

    • 上腕側外側上顆を軽く押圧するだけで、飛び上がる程痛む。
    • 総指伸筋と小指伸筋(手首を背屈し、中指と人差し指を動かす筋肉で、指をそらす働きを行う)に著明な圧痛あり。
      両筋肉は、上腕骨外側上顆に付着している。
    • 尺側手根伸筋(手首を小指側に曲げる筋肉)
    • 上腕三頭筋の緊張・萎縮を認める(肘関節では肘を伸ばす働きをする)
    • 肘筋(肘を伸ばすときに三頭筋の働きを助け、関節包を緊張させる)の萎縮・緊張を認める。

    中医学による病態の把握
    byoutai04

      舌診

    • 舌体
    • 舌の動きは正常

    • 舌色
    • 淡紅舌、やや紅

    • 舌苔
    • 薄白苔、苔やや少なく水っぽい
      苔が少なく水っぽいのは、脾気の生理機能の低下を示す)

    • 舌下静脈の怒張、少しあり
      全身の一部で血流が低下していることが考えられる
    • tongue out

      脈診

    • 毎分72 滑脈
    • ~臓腑弁証~

    • 肝鬱脾虚
    • ~気血津液弁証~

    • 気滞証
      気の流れの停滞により、推動力が低下し、血液と体内水分の流れが悪くなり、それらの停滞を引き起こしている。
    • 湿証
      苔が少なく水っぽいのは、脾気虚による水分の代謝障害である。
    • 瘀血証
      身体内の血液の流れが身体の一部で悪化しているところがあり、慢性化していると判断する。

    方解

    byoutai09

    ~現代医学的病態把握はパソコンで肘を傷めたことを証明している~
    パソコンを使用するとき、手を背屈させて、やや手を外側に向けてマウスを使い、中指と人差し指を動かす動作をくり返すと思います。

    現代医学的病態把握の中で触診により筋肉の緊張や圧痛を診てみると、まさにパソコンを使用するときの動作で多用する筋肉が緊張・萎縮し、それらの筋群の付着の上腕側外側上顆に激しい炎症を引き起こしております。まさにパソコンの使用により引き起こった症状であります。
    ですから、パソコン肘と名づけました。

    指や手首を動かすだけの軽い力なのにと思っても、繰りかえし何時間も使っていると、筋肉は疲労し緊張・萎縮し、筋肉に痛みや炎症を引き起こします。
    それらの筋肉の付着部であり支点となる上腕側外側上顆に激しい炎症を引き起こしたと考えられます。

    現代医学的病態把握の中で、筋肉の作用から遡り分析してみると、明らかにパソコンによる障害であることが裏付けられました。

    ~東洋医学的把握から証明されるもの~
    東洋医学の経絡の観点から見ると、緊張・萎縮した前腕筋群の中を手の陽明大腸経の経絡がまさにその筋中を通っているので、便秘を引き起こす誘因になったと考えます。経絡の中の経気(気血)の流れが悪くなったためです。またストレスにより、肝気が鬱滞し、脾気が低下したために消化・吸収・排出の力が低下したためと考えます。

    治療方針

    ~全身的な視点から診た鍼灸治療~
    byoutai03

    • 現代医学的な病態把握で認められた筋肉の筋緊張を鍼で取り除き、手首の背屈や中指・人差し指の健全な動きを取り戻す。
    • 同時に、上腕側外側上顆の周りに鍼を集中して刺針し、炎症を改善させる。一つ一つの筋群に丁寧に刺針し、浅層から深層まで柔らかく穏やかに進鍼し、筋肉の正常な弾力をくり返す。
      丁寧にということは、何度もくり返し、筋肉の中に鍼を通して明らかに緊張が改善されるまで、柔らかい弾力を取り戻すまで時間をかけて施術を行うということである。鍼を刺せば、筋肉が緩むというものではない。

    ~鍼の進鍼技術について~
    筋肉は、鍼の繊細なタッチを快く受けとめて始めて反応するものである。緊張した筋肉を緩めるためには、柔らかい指先の弾力をもち針先に全精神を集中させ、髪の毛よりも細い鍼の先を感じ筋肉と心地よく戯れるように手技を施すことが必要である。肘の炎症を取り除くためには、卓越した鍼の技術が必要である。経験を積み指頭感覚を鋭敏にしないと非常に難しい部位なのである。

    • 東洋医学的病態把握で認められた証に対して施術を行う。肝気を巡らし、脾気を高める施術を行う。
      合谷・太衝・内関・疏肝理気・中脘・天枢・足三里
      (胃腸の働きを高め、胃と腸を連動させ、脾気を高める。肝気を巡らし脾気を強めることでストレスを改善し、胃腸の働きを高める。)
    • 全身的な病態を回復する鍼と、局所に対する鍼を同時に並行して行い、最短の期間で激痛を取り、正常な指の動きを取り戻せるように努める。

    治療経過

    患者様のお声をそのまま記します

    第1回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    一回の治療で、急に痛むことはなくなりました。

    第2回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?

    第3回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    はい、あります。
    激痛が、ましになりました。肘を伸ばすのは、まだ痛いです。

    私見

    bensyou

    現代医学的病態把握のなかで、明らかにマウスを使う動きとキーボードを打つ動きで引き起こされた症状であることが裏付けされた。

    また東洋医学的病態把握の中で、ストレスにより脾気が低下したこと、また負傷部の前腕筋群の筋中を、大腸経の経絡が通過しているため、その前腕筋群の経気(気血)の流れが妨げられた。その両方が要因となって起こった症状である。

    また東洋医学的病態把握の中で、ストレスにより脾気が低下したこと、また負傷部の前腕筋群の筋中を、大腸経の経絡が通過しているため、その前腕筋群の経気(気血)の流れが妨げられた。その両方が要因となって起こった症状である。

    パソコンを多用する現在、このように肘を痛め、パソコン肘になる人々は、沢山いるであろうことが容易に推測される。

    激しく痛むときは注射や薬で一時的に痛みを抑えることも一つの方法であり、完全に回復するまで前腕の安静をはかれれば良い。

    しかし、痛みを抑えてこれまでと同じ作業を継続するのなら、症状はさらに悪化し重症化してしまう。症例の患者様のように一時的な対処療法で改善が見込めない場合は、根本的な改善のための治療を行うことが日常生活に支障が無いところまで改善させるための最も早道である。

    [神経痛]首から背中、上腕から肘、手首にかけての電気が走ったような激しい痛み

    初診

    2018年1月22日  
    52歳 男性

    主訴

    首から背中にかけて、さらに上腕、肘、手首に電気が走ったような激しい痛みが起こり、手指がしびれ、握力が3分の1以下に低下し、手に力が入らなくなった。

    診断名

    胸郭出口症候群(頸椎症の疑いあり)と判断する

    随伴症状

    • 首・肩・背中の凝り

    現病歴

    horse一日中、座って朝から晩までパソコンに向かっている仕事をしております。ですので日頃から常に、首、肩、背中が凝っております。趣味で馬術競技(レイニング)を毎週土日、10年程続けております。

    朝起きた時、背中の肩甲間部に鈍い痛みが起こり、
    左腕がとても重くなりました。

    昨年の12月の半ば、朝起きた時、背中の肩甲間部に鈍い痛みが起こり、左腕がとても重くなりました。年が明けて正月より、馬術の練習を打ち込んで数日間行いました。
    その後、いろいろな症状が起こり出しました。

    • 首の位置(向きを変える)によって背中及び上腕の後側から前腕外側、手首にかけて電気が走ったような激しい痛みが起こります。
      痛みが起こると、手の指がじんじんとしびれてきて(特に中指と薬指)、手の感覚がなくなり、だんだん力が入らなくなります。 
    • 車を運転していると、15分位で背中が強ばって、肩、腕にかけて感覚がなくなってきます。
    • 頭を洗った後、左手にドライヤーを持って、頭の後ろに回した状態で、頭を下げると、肩と肘と手首に鋭い痛みが走ります。
    • 仰向きで寝ると首が痛いので、左上、横向きで寝るようにしていますが、夜中に仰向きになるとズキッと痛みが走って、目が覚めます。

    首が痺れて動かなくなることが、年に1,2回ありました。

    neck馬術は、1時間程度で、あまり体力は使いませんが、馬がぬかるみに足をとられたり、こけかけたり、驚いて跳ねたりすると、肩と背中に力が凄く入ります。その後数分間、首が痺れて動かなくなることが、年に1,2回ありました。
    1月13日に風邪をひき、1月22日に10日ほどかけて、やっと治りました。だんだん手の痺れが酷くなり、握力が半分以下に低下し、力が全く入らなくなりました。最初は脳梗塞かと思ったのですが、痛みが酷いので、これはもうすぐに当院に行った方が良いと思い、1月22日に急いで来院いたしました。

    現象

    現代医学的な方法による病態の把握と、
    中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

    現代医学的な把握
    byoutai02

    頸椎の徒手検査

    前屈痛→背中の肩甲間部がつっぱって痛い。
    後屈痛→肩引きのあたりにビリビリという痛みが走る。
    左回旋痛→左上腕後側が痛む。
    右回旋痛→痛みは起こらない。
    右側屈痛→左の肩がつっぱる程度の軽い痛み。
    左側屈痛→上腕の後ろから前腕の外側、中部までがじんじんする。
    上腕と前腕が痺れてくると、次第に指先がじんと痺れ、感覚がなくなってくる。

    • 起立しようとすると、左足首内側が痛む
    • 左足の踵をつけてつま先を外側に開こうとすると、左足首内側が痛む
    • 左足首内顆及び三角靭帯の周囲に腫脹を認める(触診による圧痛なし)
    • 屈筋肢体の肥厚を認める(触診による圧痛なし)
    • 長母指屈筋の上3分の1の部分に強い筋緊張と圧痛を認める
      (足弓を保持する、足の指の底屈及び足の回外を行う)
    • ライトテスト(陽性)
      左の腕を外転し、90度以上挙げると脈の拍動が(肘をまげなくても)消失する。
    • 3分間挙上テスト(陽性)
      左腕を挙上すると、すぐに脈の拍動が消失する。
    • スパーリングテスト(陽性)
      左への側屈は、わずか20度が限度で、上腕、前腕への痛みが増強する。
    • エデンテスト(陰性)
    • 触診で、著しい筋緊張を下記に認めます。

    • 左頸部筋群及び左肩の僧帽筋
    • 頸部より、肩甲骨外側の上部にかけて、さらに菱形筋
    • 上肢帯筋及び上腕・前腕の筋群

    中医学による病態の把握
    byoutai04

      舌診

    • 舌体
    • 老舌

    • 舌色
    • 紅舌

    • 舌苔
    • 厚膩苔で色は黄色。痰濁内停
      これは、水分の代謝が悪くなり、体内に水分が長く留まり、古くなって体内水分が粘り、汚れて熱せられていることを示す

      tongue out

      脈診

    • 毎分72 滑脈
    • ~臓腑弁証~

    • 特になし
    • ~気血津液弁証~

    • 痰湿証
      苔は舌全体にやや厚く、黄色く粘っこくなっている。
      このことより、身体内の水分代謝が悪化し、慢性化して長期にわたっていることが分かる。体内水分が長期間留まると、水分は汚れて汚くなる。寒がりとか、暑がりとかあるように、乾燥や湿気の多い体質もあるのである。この水分が、筋肉の中に留まると、筋肉は粘土のようになり、弾力を失う。
      血流も悪くなり、自ら行う正常な筋肉への自然快復が障害される。
    • 瘀血証
      身体内の血液の流れが悪化し、身体のある部分で血瘀の状態が慢性化していることが分かる。

    方解

    byoutai09

    パソコンに座り一日中、頭脳労働を行なっている。
    首・肩・背中が常に凝り固まっている。1週間に2回の馬術の練習は、気晴らしにもなり、健康のためにも良いが、疲労が溜まった身体で競技を行うと筋肉に負担がかかり、逆に筋肉の緊張や疲労を引き起こす。
    特に片手で手綱をもつ左腕から首・肩・背中にかけての筋肉の緊張は深層まで凝り固まっている。これは疲労が少しずつ積み重なっていたもので、首および胸郭・首から肩甲骨にかけての筋肉・肩甲間部の筋肉(菱形筋・脊柱起立筋)の深層まで凝り固まらせた。

    特に頸部および胸郭、首から左肩甲骨外上角にかけての筋群の強力な筋緊張は頸部で神経圧迫を引き起こし、首から背中そして上腕から肘そして手首の痛みおよび手指のしびれ、さらに握力の低下をもたらしている。
    痛みは、菱形筋および脊柱起立筋の深部まで凝り固まっているために引き起こされている。握力の低下は、筋緊張が深部にわたり慢性化し、それらによる神経の圧迫が重度であることを示している。

    治療方針

    ~全身的な視点から診た鍼灸治療~
    byoutai03

    ~握力の低下を考慮した治療~
    握力の低下が正常時の3分の1以下に達しており、神経圧迫が重度であることを示している。現代医学的所見で原因となる筋肉を示したが、これらの筋群を丁寧に鍼で緩めていくことが、この病態の改善の決め手となる。

    ~神経圧迫は長引かしてはならない~
    握力の低下を招いている神経圧迫は、長引かしてはならないが、深層の筋群まで緊張を緩めないと、この神経圧迫は取り除けない。
    一刻も早く、深層の筋群へ鍼を進鍼させる。そのためには、治療間隔を密にしてあまり日にちをおいてはならない。
    握力の改善が見られるまでは、治療間隔を中2日とし、3日ごとに治療を施すことが好ましい。
    例え1回の治療時間がどれだけ長くかかっても、病態把握で指摘したすべての筋肉を緻密にかつ深部までほぐしてゆく。

    鍼で筋肉をほぐすということは、手でトンガを持って畑を耕すこととよく似ている。荒れ果てた硬い畑を耕すことは、とても大変なことである。必死でトンガを入れて畑を掘り起こしても、畑全体を深く掘り起こすまでは時間を要することは誰にでも想像できることである。
    少し掘っては、水をやり、肥料をやって緻密な作業を積み重ねて深い所まで柔らかくなった畑が始めて作られる。

    鍼の作用
    鍼を刺入すると、その人の筋肉は鍼の強い弛緩作用で緊張が緩んでゆく。
    鍼を抜いた後も、リンパ球が一斉に流れてきて、修復するまでの間、2、3日留まり、自らの血液で筋肉を修復させてゆく。
    有難い自然回復力は、人間には常に働いているのである。
    頸椎症の疑いがあり、否定することができない。
    頸椎がどのような状態であるか、いつでも診てもらえるように提携先の整形外科にも紹介状を既に書いた。
    いずれにしても、全力で治療を進めてゆく。

    治療経過

    患者様のお声をそのまま記します

    第1回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    痛さに変化はありません。まだ痛いです。

    第2回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    握力が3分の一以下で全然手に力が入らなかったのですが、手が強く握れるようになりました。
    ~私の触診~
    私の手を患者様の左手で、できるだけ強く握ってもらいました。
    握力は当初、右手の三分の一以下だったのですが、半分ぐらいまで回復していることを確認しました。これは非常によい経過で、想定を越えた回復です。通常、握力の回復には10回以上の治療をおこなった段階で始めて見られるものです。
    当クライアントの回復力は、めざましいことを示しており、特異であるとも言える。
    心配した頸椎症からくる神経圧迫はほとんどなく、例えあったとしても、軽度であり握力の低下を引き起こしている神経圧迫は筋肉であることがより想定できる。想定より早い回復が可能かも知れない。

    第3回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    背中の痛みはほとんどなくなり、痛みを感じるのは肩から手首だけになってきた。
    手は、大分強く握れるようになりました。
    ~私の触診~
    背中の硬結が前回の治療でほとんど取れ、今日は硬結を探す程しか確認できなかった。背中の痛みは、首からの神経痛ではなく、日常の凝りの上に馬術競技の負担が重なったものであると判断できる。
    握力は、私の手を握ってもらうと痛い程まで改善した。正常時の2/3まで改善したと言える。頸椎の損傷を心配したが、順調な経緯である。

    第7回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    昨日の強い痛みや頭痛はなくなりました。
    左腕のしびれも少しずつ良くなってきているように思います。

    第8回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    指先のしびれはかなり減少しました。まだ少しからだの向きによっては引っ張られる感じがします。

    第9回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    70%~80%、痛みが治りました。
    体調の変化はありますか?
    首や肩の凝りが、よ程改善されました。

    第10回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    指先のしびれ、動かしにくさはまだ残っていますが、痛みはかなり薄れてきています。

    第15回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    痛みはほとんどなくなりました。握力もほとんど元通りになりました。

    第16回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    握力は正常に戻りました。日常生活がしやすくなりました。ただ、指先のしびれだけがまだ少し残っています。これを取ってください。
    ~院長の一言~
    はい、分かりました。もう少しで取れますよ。

    第22回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    しびれ、痛み共になくなりました
    ~院長のアドバイス~
    よかったですね。握力が3分の1以下に落ちて、痛み、痺れともに強かったので、心配しました。強い回復力ですね。

    患者様からの質問

    肩こりだけがまだ少し残っています。
    鍼を通しても、鍼の響きをほとんど感じません。これは肩こりが慢性化しすぎて、痛みを感じないのです。しかしこの麻痺感覚は、良くありません。肩こりを深層まで取って、再発しない状態を作っていきましょう。
    神経痛・痺れに対しての治療は、今日で終了します。

    第23回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    施術当日はかなりだるさがありましたが、その後肩こりが楽になりました。筋肉痛と肩こりの違いが感じられるようになったと思います。

    私見

    bensyou

    来院当初、手の握力が著しく低下していた。私の手を力一杯握ってもらったが、私が力を入れなくても、全く痛くない程で、正常時の1/3以下に低下していたと思われる。
    通常握力が60kg程あるそうだが、20kgもないように感じた。当然ここで、頸椎の損傷を考えたが、とにかく治療をすすめることにした。

    MRIなどで頸椎の椎間板が脊髄を圧迫していて、うわっと思う程の状態であっても、握力の低下や下垂手などの神経麻痺が改善し、日常生活に負担が無い状態まで改善することを何度も経験している。
    当院では少しでも疑わしきは、調べろで、提携先の整形外科でレントゲンやMRIを撮ってもらうようにしているが、今回は検査に行く前に症状が改善されるかもしない。症状が改善された後で、念のため、レントゲンを撮るのであれば、患者様の精神的な負担もより軽減されたものとなるであろう。

    症状が重い場合は、手術が必要となり提携の整形外科に紹介をするのだが、今回は早めに来院いただいたこともあり、改善が見られてよかった。

    [左足首及びアキレス腱の疼痛](ムエタイの練習で8ヶ月前に傷めた)

    初診

    2018年1月30日  
    53歳 男性

    主訴

    左足首及びアキレス腱の疼痛

    診断名

    長母指屈筋及び長趾屈筋の挫傷

    随伴症状

    • 起床時、立つと左足首の内側が痛む
    • 歩行時、左アキレス腱の疼痛
    • 左足首を外に開こうとすると左足首の内側が痛む
    • 腰痛

    現病歴

    deec2d2988275cc41953bbcac9967dc9_s大学で空手道を初め、その後キックボクシングを行いました。ムエタイの世界チャンピオンと闘い、敗退をきっかけにムエタイを学び、現在タイでジムを開いて、ムエタイを教えております。中国拳法など数々の達人から武道を学び、武道家としての道を歩みながら、後輩を育てております。

    朝立ち上がって体重をかけたら、
    立ち上がれないことがありました。

    去年の5月、ムエタイの練習中で選手を鍛えるために、私の左足首の内側で選手のすねを何度も(100回以上)蹴りました。外側で蹴ると強すぎるので、怪我をさせないために内側を使ったのです。その後、左足首をぶつけたり捻ったりすると、左足首の内側が激しく痛みます。朝立ち上がって体重をかけたら、立ち上がれないことがありました。左足の踵をつけて足の先を外側に回すと、足首の内側が痛みます。4日前の練習中に左足首の内側が当たり、歩行時アキレス腱が痛みます。

    ムエタイの練習を通して、
    心を研くことの大切さを知りました。

    muetai昨年の5月より現在まで8ヶ月間、このような状態が続いております。また、1年前に130㎏の相手を右手で持ち上げて、何度も投げ身体を鍛えていたのですが、その後右腰が痛みます。
    ムエタイの練習を通して、武道家として強いだけではなく、心を研くことの大切さを知りました。3年前、中学の教員を辞めて、現在志ある若者の中で、心技体揃った本物の心ある武道家を育てるため、タイに移住して、日本とタイを行き来しながら選手を育てております。

    現象

    現代医学的な方法による病態の把握と、
    中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

    現代医学的な把握
    byoutai02

    • 起立しようとすると、左足首内側が痛む
    • 左足の踵をつけてつま先を外側に開こうとすると、左足首内側が痛む
    • 左足首内顆及び三角靭帯の周囲に腫脹を認める(触診による圧痛なし)
    • 屈筋肢体の肥厚を認める(触診による圧痛なし)
    • 長母指屈筋の上3分の1の部分に強い筋緊張と圧痛を認める
      (足弓を保持する、足の指の底屈及び足の回外を行う)
    • 長趾屈筋の上3分の1及び中央部に強い筋緊張と圧痛を認める
      (休脚では指を曲げ、足を底屈に曲げる、足を回外させる。立位では足弓を保護している)

    中医学による病態の把握
    byoutai04

      舌診

    • 舌体
    • 良く動き、軽く締まった感じ。(特に異常はなし)

    • 舌色
    • 紅舌(寒熱を問えば、どちらかといえば熱証であることが分かる)

    • 舌苔
    • 全体に広がり、やや苔が多い

      脈診

    • 毎分60 滑脈
    • tongue out

      ~臓腑弁証~

    • 特になし
    • ~気血津液弁証~

    • 痰湿証
      苔は舌全体に薄く広がりやや厚めである。身体内の水分代謝が少し低下している。舌体の状態が良いので、ちょっとした食事療法で改善できる程度。

    方解

    byoutai09

    ~足首の痛い部分が主な要因ではない~
    視診で、左足首の内顆及び三角靭帯の周囲の明らかな腫脹、及び屈筋支帯の肥厚が認められる。しかし、触診による圧痛はない。
    左足首内側の周囲は、血行や代謝が悪くなり、むくんで腫脹しているので、当たると痛いが、今回の主訴の主な要因ではない。
    この部分は代謝が悪くなったため、むくみが継続しているだけである。

    ~痛みの主な要因は長母指屈筋及び長趾屈筋にある~
    主な原因は長母指屈筋及び長趾屈筋の慢性的な緊張・萎縮にある。
    筋肉の作用からみて、また筋の起始停止・走行からみて、この筋の腱は足の内側を走り、足底へ出て拇指の末節骨底に終わる。
    痛む部位は、これらの筋の走行部位であり、作用からみても原因はこれらの筋にある。
    また腓腹筋も慢性的に萎縮・緊張している。足の内側の痛みの主な原因は、この2筋の慢性的な筋緊張である。

    治療方針

    ~全身的な視点から診た鍼灸治療~
    byoutai03

    根本原因に対し治療を行えば痛みは改善する
    足首の痛みを引き起こす主な原因であるこの2筋の筋緊張を改善させる。腓腹筋の下にあり、深層にある筋肉なので丁寧に浅層からほぐしていく。決して激しい手技を用いない。柔らかく浅層から丁寧にほぐし、深部までほぐしていく。

    痛みの部分には根気よく対処療法をつづけるだけでよい。
    足首の屈筋支帯の肥厚や内顆及び三角靭帯の周囲の腫脹は、丁寧にマッサージを続け、その後にボルタレンテープなどの炎症をとり、血行を促進するものをはり続けた対処療法を続けることで、対処的にそこのむくみがとれるまで、根気よく続けることで改善される。当たっても痛くなくなる。

    そのために全身療法としては、全身の血行を促進させ、水分の代謝を促進させることにある。

    治療経過

    患者様のお声をそのまま記します

    第1回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    足首の痛みがまったくなくなりました。とても不思議です。
    2月7日にタイに帰るので、それまでに何回でも来ますので、根本的な治療をお願いします。

    次回は2月1日の予定です。

    私見

    muetai

    競技でいう「勝つか負けるか」にこだわらず、本当の強さを求め、世界を旅し、武道家としての道を歩もうとされています。
    本当の強さとは、身体能力や技が磨き抜かれていて、そこに、心が備わった状態だと私は思います。
    当クライアントは、心と技を磨いているうちに、それらが合致したとき、自分の身体能力や、技術以上のものが、繰り出せるようになったそうです。

    心が備わるとは、腹ができている人間のことで、良心が磨かれているという意味であると私は思います。ご自身は、武道家としての道を限りなく追求しながら、心ある本当の武道家を育てることが、ご自身の仕事であり夢であると言います。私自身、お話をお聞きしていて、多くの共感するものがありました。武道もスポーツ化され、本物の武道家が少なくなった現在、大変に貴重な存在だと思います。

    今回の負傷部位の障害を改善して、万全な体調で、志を達成して欲しいと思います。タイと日本を行き来され、次回日本に来られたときに、また来院されたいとのことでした。万全の体調を整えるためにまた喜んで全力で診させて頂きたいと思います。

    [非定形型顔面痛]現代医学的な方法による病態の把握と、中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

    初診

    2017年12月12日  
    55歳 女性

    主訴

    非定形型顔面痛

    随伴症状

    • 首、肩の凝り
    • 腰痛

    現病歴

    528423今から5年程前、50歳の時、突然、左奥歯辺りが痛くなりました。歯科で奥歯を抜歯したが、痛みは良くならず、焼けるような痛みがのこりました。耳鼻科や神経内科で診てもらったが異常なしと診断されました。それから心療内科に行きました。そこでは抗うつ剤・安定剤・入眠剤が処方されました。痛みは少し柔らぎましたが、根本的には激しい痛みが続き、何も改善されませんでした。

    ペインクリニックで
    「非定形型顔面痛」との診断を受けました。

    痛みが、どんどん増して焼け付くような痛みが続いて、もう一生治らないのではないかと思っていました。歯科・神経内科・心療内科に行きましたが、まったく改善されず、痛い時は家事さえできません。
    あちこち転医しながら、最後にペインクリニックに行きました。ここで始めて「非定形型顔面痛」との診断を受けました。

    治療は、星状神経節ブロックと抑肝散の漢方薬を処方されました。
    この処方を受けて以来、痛みが少しずつ良くなりつつある感じがします。しかし以前より左の腰痛はあったのですが、ここ1年ほど前より、左半身全体に痛みが広がって、足の冷えも強くなってきました。そこで、家の近くの病院の痛み外来に行きました。そこでは、リリカを処方されましたが痛みはまったく改善されず、現在もその症状が続いております。

    心配することが長く続き、不眠がちになりました。

    616145今年は帯状疱疹にもなりました。
    左上顎と口腔の上左奥歯のあたりの歯茎の痛みは、チリチリ、ジンジンし、家で一人でくつろいでいると酷くなります。
    寝る前は、痛みがとても強く感じます。
    また肩や腰を揉むと、顎の周りがチリチリと神経痛のように痛みます。
    何かに集中していると気にならないときもありますが、その時に、首を揉んだりすると、ジーンと痛みが顎に伝わります。
    首・肩は、いつも凝っております。

    41歳で大阪に主人の転勤のため帰って以来、この10年は仕事(家でプリント添削などの内職)もあり、また趣味で英会話をやっており、英会話はすきでしたが、その役員もしていたので、その役員の仕事は私には責務がとても重く嫌なことでした。
    3人の子供がおり、大学受験や高校受験などで心配することが長く続きました。不眠がちで、リーゼ(安定剤)を常に服用しておりました。

    根本的に痛みがやわらぐ治療方法がないものかと
    原田鍼灸整骨院に来院しました。

    5年間続いているこの顎の痛み(口腔の左奥歯上顎の周囲の痛み)と、左半身全体に広がる痛みが出てきて、足は氷のように冷たく感じ、足が冷える症状が続いております。このような身体の状態なので日常生活がもっと楽に普通にできるようになるまで、痛みが改善できたらと考えておりました。もっと日常生活の質を上げたいと思っておりました。根本的に痛みがやわらぐ治療方法がないものかと思っておりました。
    そんな折、主人が腰痛や腰仙関節の痛み、身体の歪みの改善のため通院している当院に行くことを勧められました。
    そこで、12月14日(木)に当院に来院いたしました。

    既往歴

    08694640歳の頃より、不安証、不眠症などで心療内科にかかっていました。
    35歳から40歳の頃、PTAの役員をしておりました。
    役員をすることはとても苦手で、嫌でした。
    長男が公立の中学受験で中高一貫の6年制に受かりました。しかし、地元の中学でないことと、やがて主人が転勤することなどを考えるととても不安でした。
    主人は仕事が忙しく仕事に没頭していたので、子育ては一人でやってきた感じがいたします。
    父は20歳の時他界し、30歳の時、母が亡くなり、相談する人がいなくなったのも不安が続いた原因と感じています。

    現象

    現代医学的な方法による病態の把握と、
    中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

    現代医学的な把握
    byoutai02

    • 現代医学的な病態把握
    • 首、肩背筋群の筋緊張著明。
    • 腰部および臀筋群の筋緊張著明。
    • 腰を押圧すると筋緊張が著明で、本人も痛みを感じる。
    • 左臀部の中殿筋・梨状筋のあたりに著明な筋緊張を認める。

    中医学による病態の把握
    byoutai04

      舌診

    • 紅舌

    • 厚膩苔で色は黄色。痰濁内停(これは、水分の代謝が悪くなり、体内に水分が長く留まり、古くなって体内水分が粘り、汚れて熱せられていることを示す)。

    • 舌下静脈の怒張
    • 著明(脈絡が網目状になっており怒張がある。
      このことは、体内の血流が慢性的に非常に悪化していることを示す。)

    • 舌尖紅
    • 心火の亢盛を示す(自分の感情よりも、理性に重きを置いて行動する傾向にある)

      脈診

    • 渋脈(全身の血液の流れが悪いことを示す)
    • 90毎分、滑脈(脈が早く、黄膩苔であることから、舌診と合わせて、血液が熱せられていると判断できる)
      顔が赤く熱感がある。足については、本人は氷のように冷たいと感じているが、私が触診してみると、足の先はまったく冷たくはない。
      証は上熱下寒である。体内の陽気、すなわち熱量は十分であり不足していないが、熱が上半身に偏り、下半身に熱が不足している状態である。これは熱の分布に偏りがあることを示す。

      tongue out舌尖が紅(舌の先が赤い)で、心火が亢盛している。心火が亢盛すると、心火が下って腎陽を温め、腎水を蒸騰気化できなくなり、心陰が養われず、心陽を抑えきれなくなる。
      体内の火(心火)と水(腎水)の関係がうまく行かなくなり、心腎不交となる。

      治療法則は交通心腎である。

      心火を瀉し、腎陽を温め、心と腎の交通をはかる。
      経穴は、手の少陰心経の栄穴である少府に鍼で瀉法を施し、心火を瀉し、腎兪に灸を行う。

    方解

    byoutai09

    舌診・脈診より体内水分が長く停滞し、粘って熱せられ汚れて、体内水分がドロドロになっていることが分かる。
    重度な痰濁証であり、証は痰濁内停である。

    さらに舌下静脈の脈絡の怒張が激しく、重度な血瘀の状態である。すなわち、体内の血液の流れが慢性的に悪化していると判断できる。心火亢盛と肝欝気滞を引き起こしている。

    心火亢盛は、不安を増長させ、理性的な判断を低下させる。

    また上熱下寒を引き起こす。

    肝欝気滞は、感情の起伏が激しく、怒りやイライラをもたらし、精神の抑鬱状態を引き起こす。

    舌脈診より熱証であり、体内の陽気、すなわち熱量は十分に存在する。

    しかし足が氷のように冷えるのは、気滞証、痰濁証、瘀血症、上熱下寒のためで、本来の陽気不足のためではなく、著しく全身の血液の流れが傷害され、末梢では血流が停滞しているためである。

    治療方針

    ~全身的な視点から診た鍼灸治療~
    byoutai03

      z
      鍼治療で肝気の鬱滞と、心火亢盛を改善させる。

    • 治療法則は、肝気の鬱滞に対しては、疏肝理気を行う。
      経穴は、太衝、合谷、内関を選穴する。
      心火亢盛に対しては、清心瀉火を行う。
      経穴は、少府を選穴する。
    • 気滞、血瘀証に対しては、理気、活血を行う。

    • 経穴は、合谷、太衝、足三里、三陰交を選穴する。
      痰濁証に対しては、足三里、豊隆、三陰交、陰陵泉、合谷、曲池を選穴する。
    • 合谷、曲池で、全身の熱を清熱しながら、水分代謝を促進させる

    • 最も得意な経穴を選穴し、停滞した水分代謝の促進を行う。
    • 肝気の鬱滞と心火亢盛の証を改善させ、精神や感情の安定をはかる。

    • そして身体内の血流の改善や水分代謝の促進を行う。

    ~非定型形顔面痛について~

    非定型形顔面痛は、原因が現代医学的にも明らかにされておらず、専門医も少なく、適切な治療を受けられるまでに何年も要すると言われている。また適切な治療を受けたとしても、痛みは改善するが完治には至らないことが多い疾患であると言われている。

    このように改善の難しいこの疾患に対しては、中医学弁証により証をたて、証に基づいて全身的な総合的な病態に対して治療を施す必要がある。そうして悪化した体質改善をはかり、ご本人の生まれながらにして持つ自然回復力を最大限に引き出すことが何より大切なことである。

    治療経過

    患者様のお声をそのまま記します

    第1回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    あります。
    歯茎が腫れて出血 → 楽 → またジンジン →出血
    腰、鼠径部、膝、肩など連動して痛い
    体調の変化はありますか?
    あります。
    すごく楽になったり、また痛くなったりする。

    第2回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    あります。
    治療後半日ほど、だるさ、痛さ → その後、一枚はがれたようにだるさ、痛さが軽くなる。
    体調の変化はありますか?
    あります。
    頭がぼーっとしていたのが、ましになる。家事がはかどりやすい。

    第3回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    やや軽くなりました。
    左脇腹や左みぞおち、左腹筋が、筋肉痛のようになった(今はやわらいでいる)。
    体調の変化はありますか?
    やや良くなりました。頭の重さ、身体のだるさがやや改善しました。

    第4回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    あります。
    波があるが、やや軽くなっている。
    体調の変化はありますか?
    あります。波があるが、頭のボンヤリ感がましになった。

    第5回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    あります。前回と同じように一進一退。
    体調の変化はありますか?
    あります。一進一退だが、どんどん悪くなっていく不安感がうすれてきました。

    第10回目の治療

    痛みの強さに変化はありますか?
    確実に痛みは和らいでいます。
    体調の変化はありますか?
    痛みが和らいでいるときは、体調もよいです。冷えも和らぎます。日によって、また一日の中でも上がり下がりがあります。

    私見

    bensyou
    非定型形の顔面痛は、現代医学でも原因不明とされており、検査をしても異常がないため、本気で取り組まれず、精神的に追い込まれるケースが多い
    しかし原因不明の痛みは、脳の中の痛みをコントロールしたり、認知したりするシステムに変調が起こって、脳の中で痛みが増幅されたり、勝手につくり出されるのだという事が解明されてきました。
    痛み止め(鎮痛薬)は、末梢神経に作用する薬であるため、脳の中で起こる痛みには効果はありません。
    脳に働きかける薬である抗うつ薬、抗てんかん薬、抗不安薬が効果を発揮すると言われています。

    心理療法

    一日中、痛みの事を考え続けると、いくら薬を服用しても意識が痛みに集中し、神経をさらに刺激して痛みがなかなか改善されなくなります。
    このようなケースはよく見られることで、痛みから意識をそらせる認知行動療法などの心理的治療が大切です。

    星状神経節ブロック

    頸部にある星状神経節に局所麻酔薬を注射したり、レーザー照射を行います。痛みの悪循環を改善させる効果が期待できます。

    鍼灸治療、漢方薬

    鍼灸治療や漢方薬による治療も有効です。
    鍼灸治療や漢方薬の治療は、体質改善や精神安定に効果があり、原因不明の痛みに対しても効果が期待できます。
    効果的な現代医学的な治療方法と併用すれば、さらに効果的と言えます。

    ~当院での治療方針とその内容~

    • 中医学弁証論治により証をたて、証に基づき、証に対して治療を施し、根本原因に対してアプローチし、体質改善を行い疾病の根本改善を行う。
    • 現代医学的な知識を応用して、全身の筋肉の部分部分の疼痛を改善させる。
    • 交流分析に基づき、自律訓練法などを用いて心理療法を施し、精神状態の根本的な安定をはかり、痛みを改善させる。

    現代医学的な治療と併用して当院の治療を行い、自然回復力を最大限に高めて、疾病の根本的な改善をはかり、日常生活に差し支えがないところまで、できるだけ短期間で改善させることを、現在の時点での第一目標とする。
    そして、次の目標として、疾病の本格的な根本的改善に取り組んでいく。
    改善後は症状が起こらないことを持続させ、心地よく生活にハリがあり、健康が感じられるベストなコンディションを維持していくことをお手伝いしていきます。

    [ゴルフ肘]一年前から常に右が痛く、最近左側も痛くなってきた(男性 会社員)

    初診

    2017年12月4日  
    大阪府池田市在住 男性 会社員

    主訴

    ゴルフ肘

    • 右肘内側の疼痛
    • 左肘外側の疼痛

    随伴症状

    • 疲れやすい
    • 慢性的な腰痛もち
    • 身体が異常なほど硬い

    現病歴

    ゴルフ肘1.jpg一年前から、ゴルフ肘で常に右が痛かった。
    最近、左側も痛くなって、日常生活にも支障を来すようになってきた。ゴルフは我慢してやっています。
    慢性的な腰痛持ちで、身体が異常なほど硬いです。
    インターネットでゴルフ肘を治してくれるところを探したところ、当院を見つけました。
    ゴルフ肘は諦めていましたが、治療に対する評価も良かったので行ってみようと思いました。
    12月4日、当院に来院いたしました。

    現象

    現代医学的な方法による病態の把握と、中医学基礎理論を用いる中医学弁証による全身状態の把握

    現代医学的な把握
    byoutai02

      右肘について

    • 右肘内側の痛み
    • 長掌筋、橈側手根屈筋、円回内筋、浅指屈筋、深指屈筋を押圧すると、激しい痛みを生じる。著明な筋緊張を認める。

    • 長掌筋
    • 手首を内側に曲げ、手のひらの内側にある手掌筋膜を緊張させる。

    • 橈側手根屈筋
    • 肘関節での弱い屈曲および回内。手根を内側および親指側に曲げる。

    • 円回内筋
    • 前腕を内側に回し、肘関節を曲げるのを助ける。

    • 浅指屈筋
    • 肘関節を曲げる(力は弱い)。手根の関節と手のひらに近い指の関節を強力に曲げる。

    • 深指屈筋
    • 手根、中手および指の関節を屈曲する。

    これらは手首や手根(手のひらを内側に曲げる)および指関節を内側に曲げる筋肉である。

      左肘について

    • 左肘外側の痛み
    • 長短橈側手根伸筋、総指伸筋、小指伸筋、尺側手根伸筋のそれぞれの筋間を押圧すると激しい痛みを生じる。
      強い筋緊張を認める。

    • 長橈側手根伸筋
    • 肘関節では肘を曲げる働き(働きは弱い)
      腕を曲げた状態では前腕を内側に回す(働きは弱い)
      腕を伸ばした状態では前腕を外側に回す
      手首を外側に曲げる

    • 短橈側手根伸筋
    • 肘関節を曲げる(働きは弱い)
      手首を外側に曲げる(背側)

    • 総指伸筋
    • 指を伸ばし、扇状に開く
      手首を外側(背側)に曲げる最も強力な働きをする

    • 小指伸筋
    • 五本の指を伸ばし、手首を外側(背側)と尺側(小指側)に曲げる

    • 尺側手根伸筋
    • 前腕を外側に曲げる
      手首を背側に屈曲する
      上記のなかでも、長短橈側手根伸筋の筋溝を押圧すると最も痛みを生じ、最も強い緊張を認める。

    ~筋肉の筋繊維の性質についての指頭感覚~

    キメが細かく、とても柔らかい筋肉で、特筆に値する。

    中医学による状態の把握
    byoutai04

      舌診

    • 淡紅舌(気・血が充足していることを示す)

    • 白苔が全体に広がってやや厚い(体内に古い水分が多いことを示す)

    • 舌体
    • 舌本体も水分を含み、分厚くなり大きくなっている(体内の水分代謝が悪くなり、古い水分が多く停滞していることを示す)。

    • 舌下静脈の怒張
    • 舌の裏の2本の血管に脈絡があり、激しい静脈の怒張を認める(身体内の血流が悪いことを示す)

      脈診

    • 渋脈(全身の血液の流れが悪いことを示す)
    • 気の流れが停滞したり、水の流れが停滞すると、全身の血液の流れが悪化し、渋脈を引き起こすことが多い

      ~気・血・津液弁証~

    • 血瘀
    • 血液の流れが悪くなり、血液が汚れている状態

    • 痰湿
    • 体内水分の代謝が悪くなり、古い水分が停滞している
      脾気が弱っていることで起こりやすい

      方解

      byoutai09

      ~中医学理論を用い、中医学弁証を行い、治療方法を確定する~

      普段からお酒をよく飲み、ストレスを発散させているそうである。
      ということは、お酒で上手に発散させているが、ストレスが多いことが分かる

      舌・脈診より重度の血瘀の状態が認められる。

      ストレスからの気滞による血瘀(血液の流れが悪くなって汚れている)と、アルコールの飲み過ぎによる痰湿(体内水分が停滞)の両方を合わせたものによることが想定できる。
      体内水分の停滞については、苔が多いだけでなく、舌本体が分厚く大きくなっているので、かなりの水分の代謝が障害されていると分析できる。

      ~中医学の視点から診る~

      中医学的な視点から診ると部分の筋肉をどう緩めるかということよりも
      全身の血液の流れの改善と水分代謝を促進し、新陳代謝を高めることが何よりも大切である。

      ~それは何故でしょうか~

      byoutai10

      何故なら、川で例えて言うと、流れの良い川だと、川の水の流れを引き込めば、部分の汚れは簡単に解決する。しかし、流れの悪い川の一部分の汚れを改善させることは、川の水の流れを引き込んでも、もとも流れが弱いので、部分の汚れはなかなか綺麗にはならない。

      テニス肘で右肘では、右側内側の筋群に強い筋緊張を認め、左肘では、左側外側の筋群に強い筋緊張を認める。

      ~慢性的に緊張した筋肉は、どのようになっているでしょうか?~

      慢性的に緊張した筋肉は緊張し、血管が収縮して血液の流れは、著しく低下している。そのうえ、体内の水分は筋肉に停滞しやすい。そのため筋肉は著しく弾力を失い、正常に伸び縮みができない状態になる。すなわち、筋肉が粘土のようになってしまい、筋肉の運動能力が低下する。それは、自然界で常に湿気ている所は通気が悪かったり、水分代謝が悪い条件があるのと同じである。

      ~最短で筋肉を柔らかくするには~

      テニス肘により、緊張した筋肉を最短で柔らかく改善させるためには、全身の血流の改善と水分代謝を促進させることが一番大切である。

    治療方針

    ~全身的な視点から診た鍼灸治療~
    byoutai03

    ストレスを発散して長くもってはいないにしても、ストレスがあると気の流れは一時的に停滞する。

    ~気の流れは、血に影響し、全身の血流を悪化させる~

    428752だから、まず気の流れを改善させ促進させることが大切である。
    気の巡りが良くなると血は巡り、水も巡る
    かつストレスも改善されるので、アルコールの飲み過ぎの改善にも繋がる。
    気の停滞は、ストレスの矢面にたって働く肝気の鬱滞を引き起こす。
    肝気が鬱滞すると、全身の気・血・水の流れは低下する。
    脾に影響すると、水分の代謝が悪くなり、体内水分が停滞する。
    血に影響すると全身の血流が悪くなる。
    全身症状を改善させるために、肝気の鬱滞を取り除き、脾気を強め、気・血・水の流れを良くすることが大切である。
    肝気の鬱滞を取り除く法則を疏肝理気という。
    主な経穴は、太衝・合谷・内関・陽陵泉・期門などから選穴する。
    気・血・水を巡らすツボは、足三里、三陰交が適している。
    体内水分の新陳代謝を良くするツボは、豊隆・陰陵泉である。
    これらの特別な経穴を中医学弁証により導き出し、全身症状を改善させることによりゴルフ肘を最短で改善させることができる。

    byoutai06

    中医学弁証で全身症状を改善させる鍼治療を行った後、
    現代医学的な知識を用いての鍼灸治療を行う。
    全身治療のための鍼を配穴し置針した後に、局所の治療を行う。すなわち、全身症状を改善させるのと併行して、局所の治療を行うのである。

    ~現代医学的な知識を用いての鍼灸治療~
    byoutai07

    その筋肉は、冒頭の現代医学的な病態把握のところでくわしく述べたので、参照してほしい。こうして特定した右肘の筋群および左側の筋群を一つ一つ丁寧に緩めて行くのである。

    ~鍼の治療には、高度な知識が必要である~

    効果的な鍼をするためには、的確な深さと刺入速度や強さの加減が大切で、筋肉の硬結を見つけたら、カーテンから手を放さないように手を押したり引いたりする技術が必要である。これを面取りという。

    ~面取りについて~

    筋肉の硬結を見つけたら、硬結を突き抜けても離れてもいけない。
    硬結の中に刺入し、押したり引いたりして、筋肉をバネのように伸ばしたり縮めたりしながら筋肉を緩めて行くのである。
    筋肉が緩むのを指頭感覚で感じながら、丁寧に手技を施す。

    byoutai13

    よく使う鍼は、髪の毛ほどの細さで0.12ミリである。

    筋肉に刺入したあと、鍼の先に感じる垂直圧と横側に受ける水平圧を指頭感覚で感じながら鍼を巧みに操作する必要がある。
    学校を卒業してから、鍼を通し指頭感覚を鍛え、針先で筋肉を生きものと気を合わせて仲良く戯れるようになるためには、最低でも5年以上の厳しい修行が必要になってくる。

    治療経過

    初回の治療

    初回の治療で、噓のように痛みが軽減された。
    日常生活にも支障を来していたのが、日常生活ではまったく痛みを感じなくなった。

    2回目の治療

    一回目の治療の後にゴルフのラウンドを行った。
    さすがにゴルフのプレー中は、肘が痛くなったが、右肘内側の痛みは消失したそうである。本日は、私も触診して確認したが、驚いたことに筋肉の硬結がほとんど無くなり、筋肉が随分、和らいでいた。
    左肘の外側はまだまだ痛みが残存しているということである。
    触診して診ると、筋肉の緊張が著しく、少し腫脹が認められた。そのため押圧すると酷く痛がった。冒頭の「現代医学の病態把握」のところで記した、一つ一つの筋肉を丁寧にほぐしていった。その後の触診により、かなり筋肉が緩んだことを確認した。治療に対して素直に良い反応を示してくれる筋肉である。キメの細かい本来耐久力のある筋肉であることを認識した。

    私見

    bensyou症状の割に予想より早く改善しているのは、中医学弁証論治により全身症状を改善させる治療をおこなったことによる。全身症状に潜む問題点は瘀血・痰湿であった。そこで、体内の血液の流れと水分の代謝を促進させ、部分の血液の流れと停滞した水分の代謝を促進させることにした。

    加えて、患者様の筋肉は、質がキメ細かく、耐久力があり、本来、運動能力の高い筋肉である。だから、治療に対してとても素直に筋肉が反応してくれる。

    週一回の練習と月二回のラウンドを行い、ゴルフが何より好きで取りくんでおられる。そのため、上腕・前腕・肘に直接関係する筋肉だけでなく、全身の筋肉がバランス良く発達している。とてもスポーツをすることにおいて良い体質と言える。
    予想より痛みが早く改善しているのは、それらの要素が相乗的に効果を高めていると判断する。